地域ルポ “運河の街”天王洲アイル(東京・品川) 21世紀の街づくり
九二年7月20日、東京・東品川の新しい“運河の街”天王州アイルに飲食、物販、サービスなど合わせて計四〇店舗の商業施設群「スフィアコレクション」がオープンした。これら施設群は天王州アイル計画の中核をなす大型(都市)複合施設「ソーフォートスクエア」の商業ゾーンを形成するもので、都市機能の面においては最も期待されている分野である。
天王洲アイルは一九八五年、東京湾再開発事業(東京ベイプロジェクト)の一角を成す都市計画事業としてスタートしたもので、地域の地権者二二社が中心となって具体化に移された。
この地域は、江戸時代末期においては第四台場があった歴史的な場所であったが、再開発以前は倉庫、工場街として機能していた。開発対象面積約二〇㌶(六万坪強)、ここをどう都市開発していくか、前記の地権者二二社が「天王洲総合開発協議会」を設立し、行政、関係省庁を交えて多面的な検討が加えられてきた。
このプロセスを経て八六年10月にマスタープラン(開発コンセプト)を策定し、計画がより具体的なものとなった。マスタープランによると、「天王洲アイルは、オフィスを中心とした都市開発でありながら、機能性のみではなく、本来『街』が持つべき文化性、快適性を重視した、他にない独自の“街”を創出する」としている。
このため、とくに生活機能面においては、都市生活者のためのコンドミニアムやホテルほか、充実した商業施設群や劇場などにより、“大人がゆったりと遊べる街”“地域外からも気軽にやってこれる魅力的な街”づくりという考え方も加え、地域で働く人、遊ぶ人、生活する人にとっても、それぞれ快適で利便性の高い都市づくりを実現するとしている。
天王洲再開発事業は、西暦二〇〇〇年を完成目標に進められている都市プロジェクトで、オフィス、文化、商業、スポーツ、ホテル、住宅棟など、計一五棟のビル群を建設することになっている。計画の着手は八九年2月からであるが、多くの都市施設が機能することにより、地域の就業人口は二万五〇〇〇‐三万人、定住人口二、三〇〇〇人、昼間人口五、六万人の人口規模になり、文字どおりに一つの都市が誕生する。
再開発事業最初の施設は、九一年8月に完工した「東京MIビル」(地下一階、地上二二階)で、このあと九二年6月にシティコープセンター(地下一階、地上二二階)、センタービルディング(地下一階、地上二三階)、UBEビル(地下一階、地上二〇階)の三棟の高層ビルからなる「シーフォートスクエア」、ホテル、コンドミニアムが入居している「シーフォートタワー」(地下二階、地上二八階)が完成、さらに九三年4月にはオフィス、店舗、多目的ホールなどからなる「スフィアタワー天王洲」(地下二階、地上二六階)が完工する。
これら先行するビル建設のあとも、地上高一〇〇mクラスの都市、商業施設や公団の住宅ビルが建設中で、ここ一、二年内には完成する。
現在機能している天王洲アイルの都市、商業施設は、前記のUBEビル、センタービルディング、シティコープセンターとホテル棟の四棟のみであるが、飲食をはじめ物販、サービスなど商業施設群「スフィアコレクション」は、これらビルの一、二階に、また、文化施設の中核となる劇場「アートスフィア」(七四六席)は、地下一階、地上五階部分に展開する形になっており、独自の文化、商業ゾーンを形成している。
スフィアコレクションは飲食一七店、物販一六店、サービス七店で構成する商業ゾーンであるが、飲食分野は和洋中の業態をミックスし、ヤング層からファミリー、接待利用まで、多様な客層、飲食ニーズを満たす出店形態となっており、劇場と共にシーフォートスクエア地区への来街動機を喚起する大きな集客装置となっている。