絶対失敗しないための立地戦略(13) 人口、類似都市との比較も必要

1993.04.05 25号 10面

《街の活性化の バロメーター》 これまでのシリーズでは、立地戦略のための周辺チェック項目をつづってきたが、今回から本題に入ろう。本題は少々理屈っぽくなり、読物としてはあまり面白くないと思われるが、その点は勉強と考え、ガマンいだたきたい。

以前述べたデータ集収法により集めた情報のなかで、最も注目したいのは「人口」。案外忘れがちだが、「人口」こそマーケティング、立地戦略の要。

まず一番最新版の人口統計(これは市役所などの、住民基本台帳による統計が最も新しいはず)と、それと同一条件の人口統計版の五年前、一〇年前、さらにできれば一五年、二〇年、三〇年前のものを入手し、一覧表にした上、グラフを作成する。こうすると、出店該当予定エリアの人口動向が一目瞭然となる。

人口グラフで、人口が多少の波があっても増加しているのはその街が活性化していることで、“生きている街”“将来性に富んだ街”‐‐ということができる。外食産業マーケットとしても有望ということになる。

反対に、減少しているのであれば、その街は衰退の傾向にあり、いわば死に態状態にあるといってよく、将来性はあまり期待できず、マーケットとしては不向きということ。

ここで重要なことは、単に対象エリアの市町村だけでなく、ほぼ似たような都市のモデルを選び、最低二‐三ヵ所の都市の人口動向と比較してみることだ。これにより、平均像がより正確につかめ、その街の“活性度”“不活性度”がよく分かるようになる。全国平均水準と比較するのも一法である。

この場合、首都圏で例をとれば、八王子市と町田市‐‐といった具合に、互いに「東京圏のベッドタウン地区」であり、「サバーバンエリアの拠点都市」といったような共通項をもった都市と比較しなければ意味はない。(これは、後述する他の商業特性や、工業、事業所、従業者数etcといった統計にも同じことが言える)

《昼・夜間人口比も要チェック》 住民基本台帳による人口統計のほかに、五年ごとに行われている国勢調査による人口統計も忘れてはならない。国勢調査による人口統計は、単に人口だけの増減だけでなく、昼・夜間人口で代表される重要なデータが内包されているからだ。

いくら人口が多くて、増加傾向にあっても、昼間人口比が少ない街は、いわばベッドタウンであり、平日の昼中は主婦や学童ばかり‐‐ということになり、店の売上げは、ウイークエンド型で、経営はかなりきつくなることが予想される。逆に、昼間人口が多い都市は、それだけ他の市町村からの流入が多いことを意味しており、ランチやティータイム、ディナーやナイト飲食(酒がらみの店舗)もそれだけ期街できるわけだ。また、これと逆のことも言え、それによって出店する店の性格、業態・業種、ターゲット、営業時間、休日に至るまで左右されることを覚えておきたい。

人口数だけでなく、世帯数、一世帯当たり人口も重要な意味をもつ。世帯当たり人口が多ければ、二世代同居の比率が多いことになり、極論すれば、こうした世帯は、味覚や食生活の違い、行動パターンの相違などから、外食をしにくい傾向(老人などと一緒では、食べるものも異なり、一緒では同一レストランでは無理が生じ、さらに親抜きでの外食では遠慮もあり、外食回数が自然と減ることになる)になり、外食産業には大きなマイナス要因となるのである。

《人口ピラミッドの構成比検討も》 逆に少なければ核家族、独身者が多いことになり、外食傾向は増加することになる。

さらに、人口だけ多くても、やたら面積の広い市町村もあり、「人口密度」「可住地面積」「可住地人口密度」「社会増減数」なども重要な参考データとなる。

さらに最も重要なのは、いわゆる「人口ピラミッド」と呼ばれている年齢別の人口構成比である。これについては次号で…。

マーケティングコンサル

タント 戸田光雄

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