ザガットサーベイに見る流行最前線の裏側(20)四谷・四谷3丁目地区編
東京の四谷界隈(新宿区)で一番の店…というと、多分大抵の人はあるフランス料理屋をイメージするに違いない。全国的に名前も知れているし、テレビにも良く出る。支店もいっぱいあって、知名度という点ではピカイチ。「四谷を代表する」というより東京を代表する、いや日本を代表するフランス料理屋と言ったって間違いじゃない。
だけどザガットで「コノ地域で一番」と選ばれたのは、その店じゃなく「北島亭」。同じフランス料理だけれどかなり地味な店だ。規模だって大きくないし、何より四谷の冴えないメインストリートの商店街に面して普通に出店しているまるで食堂みたいな佇まい。
どうしてこの店が一番なんだろう?
この店を一言で表せば「正直」というコトになるんじゃないだろうか? 捻りがない。実直過ぎる。当たり前過ぎる。ボリュームがありすぎる。すぐお腹一杯になる。「…パッとしないね」と言われるにも関わらず、でも不思議とリピーターが多い。
先の批判を裏返すと、パリのビストロの料理そのままなんじゃないか、と思えるほどの正統派で、「見た目よりも中身で勝負ヨ」という揺るぎない思想を感じる。
一年に一度、或いは一生に一回、特別な日にフランス料理を奮発する人にじゃなく、毎日、フランス料理を食べても不思議じゃない人達のための日常食としてのフランス料理を実直に、ただただ毎日作り続けている。
そんな店。そしてそんな店が、四谷という場所になんだかピッタリあってるような気がするネ。こうした店がある四谷、というのはなんだかいかしてる…、そんな気までする。
((株)OGMコンサルティング常務取締役・榊真一郎)
〈『ザガットサーベイ東京のレストラン2002年度版』から引用〉
第1位/北島亭/新宿区三栄町七、JHCビル一階、電話03・3355・6667/価格目安=一万一九〇〇円/うまいものを腹一杯にはうってつけのフランス料理。食べたー、という満足感が得られる。しかし、ハーフポーションで欲しいとの声も。内装が地味すぎても、うまいもの屋と思えばOK。料理に時間がかかるのは、予約がとりにくくなるほど混むせいか。
第2位/オテル・ドゥ・ミクニ/新宿区若葉一‐一八、電話03・3351・3810/価格目安=一万七〇〇〇円/世界のミクニが供す、けっして重くない素材重視のフランス料理。暴力的に量が多いので、すばらしいデザートにたどりつく頃には苦痛を味わう。サービスのタイミングは完璧で、高いけれどもう一度行きたくなる。だが、あまりにも期待が大きいと「ミクニさん手を拡げすぎで味が落ちた」といいたくなる。
同2位/忍/新宿区三栄町一六、松啓ビル一階、電話03・3355・6338/価格目安=四二〇〇円/牛タンはこんなに美味しかったのかと、長時間並ぶのも狭くて相席なのも覚悟で通う人の多いタン専門店。涙が出るほどうまいゆでタンは外せない。この味でこの値段ならOKと高評。