カレー特集:バルチック・システム「バルチックカレー」
◆創業の経緯
バルチックカレーは、平成3年10月、吉野幸則氏((株)バルチックシステム代表取締役)が、東京・日本橋の路上でワゴン車を使って移動販売のカレーライスを販売したのが始まり。
学生時代から独立意識の高かった吉野社長は、ラーメンと同じく日本の国民食であるカレーに目をつけた。それまで、経済団体に四年間勤め、広報部で経営者のインタビュー取材を行ってきた吉野氏の決断だった。
バブル経済崩壊直後、リーズナブルかつ高品質のバルチックカレーは、当時昼食難民といわれていたOLやサラリーマンの人気を奪い、あっという間に車両二〇台を有する規模に成長した。
商売は順調に拡大したが、移動販売は警察の取り締まりとの戦いという側面もあり、「店を持ってチラシをまいて堂々と商売をしたい、品質を重視してカレーを提供したい」として、神田錦町にバルチックカレーの店舗一号店を開いた。
もとより移動販売で常連客をつかんでいたので店は大繁盛。以後、移動販売から店舗開業に移行する宣伝手法で確実に勢力を拡大。現在、郊外型店、テナント、フードコートなど立地に合わせて店舗展開している。
だが、順調な出店戦略も、急拡大のあおりで辛酸をなめた時期があった。
「多忙でご飯ジャーのふたが開けっ放しのため品質劣化を招いた店舗。温度管理を無視した店舗。教育が行き届かず、お客様に迷惑をかけた」という。
その後、吉野社長は断腸の思いでさまざまなオペレーションを改良。その過程で培ったノウハウを生かして、パチンコ店敷地に併設するミニショップ「バルチックハウス」の展開を開始。この挫折と新たな挑戦が功を奏し現在六〇店を超えるチェーン規模に成長した。
◆事業の特徴
バルチックカレーの魅力は家庭の味だ。野菜から抽出される甘みとボルシチのようなコクにこだわり、和風味に仕上げている。
売上構成比は、角煮豚骨(甘口)、若鶏(中辛)、炭火ビーフ(辛口)がそれぞれ三〇%。上位三品で九〇%を占めることから、単品志向の高い完成度が分かる。
どんなカレーも煮込むと具がとろけて味が変わる。バルチックカレーは、提供時に具がとろけることを前提に、野菜と肉がルーになじむようにセントラルキッチンで加工する。
◆今後の戦略
「ラーメン同様にカレー文化を盛り上げ、バルチックカレーをナショナルカレーに育てたい。当面一〇〇〇店舗が目標」という。
また、「来日経験者からのカレーニーズが強い」とし、今後、アジアへも進出する。大手メーカーがレトルト販売で先行しているが、それらは高級品と化している。お値打ち価格をモットーに乗り込む吉野社長は、「中国マーケットを先手必勝で狙う」と意気ごみは荒い。
◆会社概要
企業名=(株)バルチック・システム/本社所在地=埼玉県川越市鯨井一七一九/代表取締役=吉野幸則/設立=平成10年10月/資本金=六億二六六五万円/従業員数=一二四人
◆いちおし食材 桜島どり
バルチックカレーでは、期間限定メニューの「炎のアジアン地鶏カレー」が話題となった。それに使われているチキンが鹿児島・宮崎産の最高品質の「桜島どり」である。皮が薄く心地よい歯触りとジューシーな味わいが特徴だ。
◆問い合わせ=(株)ジャパンファーム(鹿児島県曽於郡大崎町益丸六五一、電話0994・76・0035)