施設内飲食店舗シリーズ 飯田橋「セントラルプラザ」 “ブラブラ歩き”独自の機能
JR飯田橋駅の北側に高層ビルが二棟建っている。駅の東口寄りのビルが一六階建の住宅・商業施設、その隣西口側に位置しているのが二〇階建の事務所(公益施設)・商業施設棟で、この二棟で延べ建物面積一万六五〇〇坪の複合都市ビル「セントラルプラザ」を構成している。
セントラルプラザは、昭和58年9月、皇居外堀の飯田濠を埋立てした「飯田橋地区市街地再開発事業」として建設されたもので、東京都ほか、都外郭団体、金融機関、地権者などが出資して㈱セントラルプラザ(本社・東京都千代田区、資本金四億円・田浦一社長‐現・小笠原巌社長)を設立して具体化している。
同プラザは一、二階部分に飲食(年間売上げ四〇億円)や物販、サービスなど商業施設を多く集約しており、施設利用と地域への来街動機を大きく喚起している。
商業ゾーンは一、二階をジョイントして、約六〇店舗からなるショッピングセンター「ラムラ」を形成しており、沿線の駅前商店街とは異なった独自の商業・都市機能を発揮している。
ラムラはアラビア語で“ぶらぶら歩きの散歩道”を意味するといい、ショッピングゾーンと施設の外周空間は文字通り、ゆとりのあるプロムナードスペースや緑地、人工せせらぎなどを展開している。
人工せせらぎは小川や池をイメージしたものだが、その周辺を樹木で囲み、来街者や地域住宅の憩いの場、やすらぎの場としての機能を発揮している。
《緑とせせらぎ が集客装置に》 都市の再開発事業・施設規模や効率の追求ばかりでなく、このような緑と水のスペースが、施設の魅力を高めて集客装置としての機能を増幅させている。
しかし、セントラルプラザは、現在は残念ながら平成7年を目標とする地下鉄(営団地下鉄七号線)工事のため、外堀通りに面した散策路の樹木を徹去しており、オアシス空間としての魅力をスポイルする形になっている。
「やはり工事中ですから、足場や施設環境が悪くなっていますので、外堀通りからのアプローチが弱くなっているのは事実です。周辺の樹木も取り払われていますし、水も流れていませんので、和める雰囲気ではありません。しかし、工事が終って地下鉄が開通すれば、環境は元の状態に戻りますし、新たに地下鉄の出入口もできるので、施設や地域への来街者は大幅に増えると思います」と話すのは、ラムラの企画・運営・管理会社㈱スカップ(本社・東京・新宿)のラムラチーフSMC河西新二氏。
◆ル・リュイソ 3800円セット導入
《ル・リュイソー》
仏料理の店で、店名は「せせらぎ」という意味。銀座コージーコーナーの経営で、同社初の本格的な仏レストラン。店舗面積二七坪、客席数はテーブル三二席、カウンター五席の計三七席。
中規模の店だが、店はいかにもフランス料理の店といった雰囲気で、シックで落ち着いている。
しかし、やはりポストバブル経済後は、法人利用などの消費単価の高い客層が大幅に減少したので、以前にも増してより積極的な経営努力が求められてきている。
結局のところは価格政策の見直しと、個人需要の掘り起こしということになるのだが、このため「仏料理は高い」というイメージを払拭しなくてはならない。
《固定客が40%も》 一年前から導入している三八〇〇円のセットメニューは、個人利用にターゲットを合わせた営業方針のものであるが、徐々に集客力の成果が上がってきているという。(土屋恭成支配人)。
メニューはオードブル一一種とメーンディッシュ(一二種)から一品ずつ選べば、デザートとコーヒーがノンコストになるというシステムのもので、客は金額を気にすることなく、設定料金の枠内で気軽に料理をチョイスできる。
それでも、ワインか他のメニューを取れば、客単価は夜で六、七〇〇〇円はいく。昼はランチメニューが二五〇〇~三〇〇〇円。
料理内容と味づくりは本場の仏料理に迫まる。客層は自営業者か企業の管理職、周辺の学校、病院関係者で、固定客が四割におよんでいる。
◆摩天楼飯店 リッチな広東料理
セントラルプラザ一、二階の商業ゾーンに出店する店舗は物販三〇店、飲食二〇店、サービスショップ三点の計五三店舗で、うち飲食施設にはハンバーガーやクレープなどのファーストフードチェーンのほか、和洋中のレストランなど多様な業態を集約しており、大手外食企業では広東料理の「摩天楼飯店」をはじめ、ステーキレストラン「肉の万世」、和食「げんない」、焼とり・釜めし「藩」、フランス料理「ビストロ・ル・リュイソー」、喫茶・洋菓子「銀座コージーコーナーなどが出店している。
《・摩天楼飯店》
JR飯田橋西口側の二〇階建の高層ビルの最上階(二〇階)に出店している。店舗面積二五七坪。ラムラの中では最大規操の店舗で、客席は一般テーブル席、円卓、和室、VIPルーム、宴会場などを合わせて計四〇〇人前後。
姉妹店が池袋サンシャインほか吉祥寺、渋谷、名古屋にもあり、外食事業をはじめ、観光レジャー、不動産事業などを展開する日東興業グループ(本社・東京)の日東ライフ㈱の経営。
日本人の味覚にフィットしたサッパり味の広東料理が売りもので、昼は週替りのランチ四種(一五〇〇~二〇〇〇円)、夜は本格的なコース料理六種(七〇〇〇~二万円)。
うちコース料理の「開花宴席」(七〇〇〇円)は、前菜の盛り合せ、カニ肉入りフカヒレスープ、カニ爪フライと揚物の盛り合せ、季節の野菜と牛肉の炒め、アワビのオイスターソース煮、車エビのチリソース煮、グリーンアスパラと白身魚炒め、若鶏の細切り焼そば、フルーツ入り冷しアーモンドゼリーなど九品。
《二万円の満堂宴席》 トッププライスの「満堂宴席」(二万円)は、特殊飾り冷菜龍と鳳凰づくり、極上ツバメの巣とフカヒレの姿煮、ペキンダックと季節のフルーツの揚物添え、極上アワビのオイスターソース煮込み、季節野菜と活ミル貝の炒め、スッポンの醤油煮込み、新鮮活魚の姿むし、きぬがさ茸の漢方スープ、エビ入りハスの菜包みごはん、季節フルーツ広東風プリンなど一〇品目で、それぞれリッチな内容になっている。料理は香港からスカウトしてきたベテランの料理人三人を軸にし、日本人スタッフが担当している。
客層は平日はサラリーマン、土日祭日は法事客や婚礼、パーティー客が中心になる。客単価は昼一五〇〇円、夜六〇〇〇円。年商七億円。
◆銀座コージコーナー
ル・リュイソーとは壁一つで隣り合せになっている。店舗面積五〇坪、客席数一二〇席、直営チェーン店でフランス菓子、軽食(パスタ)、喫茶の三つのサービス機能をもった店舗として知られている。
ラムラ店は洋菓子(ケーキ類)と喫茶・軽食が五割ずつを占める営業形態で、客層も女性七割、男性三割という比率で、レストランとしての使われ方も強い。
客層はOL、サラリーマンが八割、主婦二割だが銀座店のように九割が女性客というケースもある。
客単価は喫茶で六〇〇円、パスタ、スナック類の一〇〇〇円といったところで、客単価はそう高くない。
単品単価はコーヒー五五〇円、紅茶六〇〇円、ケーキーセットが七〇〇円と九五〇円、パスタは野菜とキノコ一〇〇〇円、ホウレン草とツナ一一〇〇円、カルボナーラ一〇〇〇円。
《ギフト30%が目標》 ケーキ類については、ファミリータイプのデコレーションケーキを中心に今年2月からギフト販売にも力を入れており、店全体の売上げの落ち込みをこの分野でカバーしていくとしている。
ギフトのウエートは全体比三割が目標で、これによって店の売上げを月商一〇〇万円をキープする。(石川雄一店長)。
◆ショッピングゾーン「ラムラ」
施設への集客といえば、ショッピングゾーン「ラムラ」への集客数は年間約四〇〇万人で推移しているというが、九〇年頃に比べると二割ほどダウンしている数字だという。
それでも、一日平均一万人以上の来街者数になる。飯田橋はJR総武(中央)線ほか、地下鉄東西線、同有楽町線が乗り入れているが、この乗降者は一日平均JRが約一九万人、東西線同一一万人、有楽町線一万四〇〇〇人で、単純に計算すると、トータルで一日平均約四一万四〇〇〇人という数字になる。
もちろん、三線間で乗り換えがあるので、実数はこの数字よりも二、三割少なくなるかも知れないが、例えそうだとしても一日平均三〇万人近くが飯田橋駅を利用しているということになる。
仮にそうだとすると、ラムラのショッピングゾーンには一日当たり約一万四〇〇〇人の来街者があるので、三駅の乗降客の三、四%がラムラにやって来るという計算になる。
ラムラの商圏は広い。地域からの利用者ももちろんあるが、中央線、総武線、東西線沿線の中野や杉並区方面、あるいは千葉や有楽町線沿線の埼玉方面からも人がやって来るので、商圏は少なくみても二、三〇㎞圏はカバーしているということになる。
飯田橋は法政、東京理科大、日本歯科大などの教育機関をはじめ、東京警察病院、日本歯科大病院、日本医科大病院、逓信病院などの医療機関、さらには近隣地に神楽坂商店街や東京ドーム(後楽園アミューズメントゾーン)、九段、千鳥ケ渕や靖国神社などのレジャーゾーンも存在するので、地域への集客機能は大きい。
このほか、飯田橋地域は大手建設会社や印刷、出版社も多く、ビジネス街としての性格も有しており、独自の商圏を形成しているのである。
◆肉の万世 売上げ減を弁当で
ラムラ飲食ゾーンの二階。店舗面積約三〇坪、客席数六八席。広く知られた肉料理の店で、主力メニューはステーキ、ハンバーグなど。
肉材は黒毛和牛を主体に、料理内容によっては松坂牛や輸入肉なども使用している。
メニューは単品で和牛ステーキ(一五〇㌘)が一九〇〇円、サーロイン(二〇〇㌘)、四二五〇円、霜降(一五〇㌘)三二八〇円、テンダーロイン(一三〇㌘)三五五〇円、ハンバーグ(二〇〇㌘)九二〇円、ジャンボハンバーグ(二五〇㌘)一二二〇円といった内容で、それぞれに醤油味やタルタルソースなど和洋二種類のメニューを用意している。
単品単価が高いという印象が強いので、利用客数に伸び悩みがあるが、売上げの落ち込みをカツサンドやステーキ弁当などの持ち帰り弁当でカバーしている。
客層は平日がサラリーマンやOL、夕方からはファミリー客やショッピング客、休日にはやはりファミリーやショッピング客が主体になる。平均客単価は昼一一〇〇円、夜一七〇〇~一八〇〇円。
◆げんない 夜は酒と日本料理
店の看板に麺(うどん)と割烹とある。昼間はうどん定食、夜は酒と焼鳥や日本料理といった、いわば“二毛作経営”の店といった営業形態にあるが、大阪からの進出で関東地区では飯田橋店ほか六店舗を出店。
店舗面積数八〇坪、客席はテーブル席、カウンター席、小上がりからなっており、計九〇席。木造り感覚の落ち着いた雰囲気。
店の営業形態は昼間が大半がランチセットの客で、客単価が九〇〇円。夜はアルコールと料理(ツマミ)ということになり、客単価が昼の倍ほどになって二〇〇〇円。
メニューは昼がかつ皿定食八八〇円やネギトロ定食九〇〇円など九種類。夜は焼鳥五〇〇円ほか、刺盛二〇〇〇円、山かけ六八〇円、牛たたき八五〇円など一品料理が七〇種類。このほか、すき焼き、しゃぶしゃぶ、会席コース(四〇〇〇~五〇〇〇円)もある。
客層はサラリーマン、OL、学生、ファミリー客など。男女比六対四の比率で、平均日商六五万円。
◆藩 異色の釜めし・焼き鳥
セゾングループの外食企業㈱西洋フードシステムズ(本社・東京)の経営。
飯田橋店は「鳥清」という屋号だったが、三年前から店構えやメニュー構成をそのままにして知名度の高い「藩」に変えた。この店は他の藩とは異なって、釜めしと焼鳥を売り物としているので、飲んでよし食べてよしの業態で、サラリーマンからファミリー客まで多様な客層を集客している。
釜めしは五目釜めし、アサリ釜めしなど七種類(八五〇~一一〇〇円)、焼鳥が盛合せで九六〇~一四八〇円。このほかに合せ膳(セットメニュー)が六種(九八〇~一四八〇円)、一品料理が一二種(三三〇~七八〇円)というメニュー構成。
アルコールは高清水や男山など地酒が一二種(一合四二〇円から)で、このほかビール、ウイスキーと一応のものを揃えている。
客単価は昼一〇〇〇円、夜二五〇〇円といったところ。客数が以前に比べ二割ほどダウンしているが、売上げは平均日商四〇万円台をキープしている。