業務用加工食品ヒット賞選考委特別賞:「富士ミネラルウォーター」

2007.09.03 333号 16面

「富士ミネラルウォーター」は、1929年に日本初のナチュラルミネラルウオーターとして発売されて以来、77年たった今でも人気のロングセラー商品であり、「水を買って飲む」といった習慣を初めて日本に紹介したパイオニア的存在でもある。

現在の富士急グループの前身となる、富士山麓電気鉄道(株)所有の山梨県南巨摩郡身延町下部の湧出地と諸施設を買収した、堀内合名会社(現・富士ミネラルウォーター(株)/東京都渋谷区)から、「日本エビアン」という名称で発売を開始したのが同商品の歴史の始まりだ。

「武田信玄の隠し湯」として有名な下部の水は、弱アルカリ性の軟水タイプ。まろやかで、口当たりの優しさが特徴の卓上水として認知が広まっていった。

発売当時、レストランや列車食堂では8銭で提供されていた、歌人の与謝野晶子も愛飲していた、富士山をモチーフとした特徴のあるラベル画はすべて画家・水平譲氏によるものなど、77年にわたる歴史の中から生まれたエピソードは枚挙にいとまがない。

戦後、「富士ミネラルウォーター」として商標登録を行い、1982年には業界に先駆けてペットボトルでの販売を開始。また、非常用保存水の販売にも乗り出している。

現在の主力ユーザーは、宮内庁や総理官邸をはじめとする官公庁、海外公館、著名ホテル、高級店、老舗など。さらに、第1~3回東京サミットや九州・沖縄サミットの卓上水にも採用され、日本を代表するミネラルウオーターとしての地位を不動のものとしている。

商品ラインアップは、リターナブルボトル(780ml、360ml)、PETボトル(2リットル、1・5リットル、1リットル、500ml、350ml)、非常用保存飲料水5年保存、3年保存(各2リットル、1・5リットル、500ml)。主流はPETボトルだが、外食筋からの根強い要望により、リターナブルボトルの販売を続けている。これもブランドのこだわりの一つだ。販売先比率は、業務用飲料水40%(半数はリターナブルボトル)、非常用保存水30%、一般宅配(通信販売)30%となっている。

今年からは採水地を、より富士山に近い山梨県富士吉田市に変更。富士山の玄武岩の地層を浸透した水は、血糖値を下げるなどの効果が期待されるバナジウムが、1リットル当たり100ugと豊富だ。名実ともに「富士山の水」として新たな歴史が作られようとしている。

◆富士ミネラルウォーター(株)代表取締役社長 富士急行(株)専務取締役 澤辺正恭氏

今回の受賞は、日本のミネラルウオーターのパイオニアとして、富士ミネラルウォーターというネーミングにふさわしい品質を保ち、ブランド力を守ってきたことが評価された結果だと思います。

今年8月から採水地を山梨県富士吉田市に変更し、バナジウムの含有量が豊富な水を提供できるようになりました。以前にも増して健康志向のお客さまが増えると期待しています。

今後もリターナブルボトルの伝統を継承しつつ、続けて高い評価をいただけますよう、ブランドを大切にして努めたいと思います。

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