お店招待席 居酒屋「芝の浦」(港区・田町) 全国の銘酒50種ズラリ

1993.11.01 39号 9面

JR田町駅東口を出て芝浦工大方向へ。芝浦三丁目、ビルの中二階。とくに特色のある地域ではないが、店舗周辺には高層住宅やオフィスビルが建ち並んできており、日中は人の往来で賑やかな街の装いをみせている。

この店は看板どおり、全国の地酒を揃える居酒屋で、大抵のものなら飲むことができる。店は六年前のオープンだが、本店格の店「ファミリー」(カラオケ居酒屋)が近接地にあり、この店は創業二七年になる。

二七年前のオープンといえば、東京オリンピック二年後の出店で、このころの芝浦は倉庫や工場が建ち並ぶ無機質な場所で、店らしい店はほとんどなく、しかもビルの地下一階というハンディのある出店だった。

「いろんな理由が絡んでの出店であったわけですが、私を知る周囲の人はおどろき、あきれていたようです。けど脱サラで資金力もなく開業したわけですから、仕方ない面もあったわけです。おかげさまで現在も店は続いており、地域の人たちのコミュニケーションの場として利用されているのですが、場所的には田町の駅からも遠く、賑やかな状況にはなっていない」と語るのはオーナーの大野家俊さん(六二歳)。

大野さんは地元田町商店会の会長をしている。福岡出身で地元で生まれ育ったわけではない。現在も毎日住まいのある千葉県我孫子から店に通う。全く地元外の人物なのだ。その人が、町の顔役になるというのも珍しい。

それだけ大野さんの人柄と実績が評価されているということだが、二店目の店である「芝の浦」は、街の活性化に役立ち、地域住民や来街者たちに心の落ち着ける場所の提供をという考えから具体化したものだ。

店舗面積約三〇坪、客席数七〇席。オール木造りの昔の農家をイメージしたぬくもりのある内装で、板間の座敷席が心を和ませる。

売りものの地酒(約四〇種)は蔵元から直接仕入れているものも多い。高清水、出羽桜、メ張鶴、真澄、土佐鶴、西の関、浦霞、菊姫など銘酒といわれているものはほとんど揃えているし、また、竹の露、雪の松島といった小さな蔵元の個性的な酒もある。

このほか、店名の「芝の浦」を冠したPBの地酒も置いている。これは富山の若鶴酒蔵(米山弘杜氏)で仕込んだもので、越中寒造りの吟醸酒や特別本醸造といった辛口。

オーナーの大野さん自らが地酒を愛飲し、吟味力もあるので、常に蔵元の人たちと情報交換を行っており、質のいい酒の発掘にも努めている。

酒はすべて一〇度Cで保管しており、常に新鮮な状態で飲むことができる。価格は一合四五〇~九〇〇円。

いい酒にはもちろん、おいしい料理もなくてはならない。この店は料理もしっかりしており、しかも品数(一五〇種)も多くバラエティーに富んでいる。

定番の刺身料理は常に新鮮そのものであるし、価格も六五〇~八〇〇円と手ごろだ。グループ対応の盛合わせは三〇〇〇~四五〇〇円で、ボリューム感もある。このほか、串焼き(一本一五〇~三二〇円)、雑魚料理(四五〇~四八〇円)、掲げ物(三〇〇~六〇〇円)、煮物(四五〇~六〇〇円)、炒め物(四八〇~六〇〇円)、酢の物(五〇〇~八〇〇円)、珍味(三五〇~六〇〇円)など。

さらには自家製の自慢料理として、餠の助六揚げ(四五〇円)、さつま揚げ(六〇〇円)、和風餃子(五五〇円)、もつの煮込み(四五〇円)など一一品目をラインアップ、すべて評判のメニューだ。

「店の方針としましては、料理は上品なうす味仕立てで、おいしくボリュームのあるものをという考えで、常にお客様の身になって、価格もほどほどのところでおさえています」(高橋芳信店長)

客層はサラリーマンを主体(七割強)に、OL、学生、ミセス、ファミリー客と多様で、客単価は三五〇〇円。昼は天丼、まぐろ丼、うな丼、焼魚定食(各七五〇円)などランチサービスもある。

(しま・こうたつ)

・住所/東京都港区芝浦3‐14‐4、さくらビル

・電話/03(3769)2038

・営業時間/昼=午前11時30分~午後1時30分、夜=午後5時~11時(土曜日午後4時~10時)

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