カレーの歴史散策 500種類以上の料理伝承
「カレー」の語源には、いろいろな説がある。タミール語の広義解釈による南インド地方の「おかず」という意味が最も一般的で、狭義的には料理を作る際に水と香辛料を煮るということから「汁っぽいおかず」とも解釈されているという。
いずれにしろ、インドでのカレーは三〇〇〇年にわたり、一説には五〇〇種類以上に及ぶカレー料理が伝承されているそうだ。
伝承といえばカレーとお釈迦様にまつわるおもしろい話がある。
お釈迦様が修行のために山篭りし、木の実、草の根で飢えを凌ぎながら悟りを得て下山して、人々に教えを説いて回った。その時、木の実、草の根を香辛料、薬草として伝えたのが、カレー村というところだったという伝説が残っているという。
語源からみると、カレー料理は確かに南インドが発祥の地だが、「カレー粉」の製品化の発案は英国であり、日本のカレー産業に大きな影響を与えている。その代表格が、クロス&ブラックウェル社の「C&Bカレーパウダー」で現在もネッスル社によって世界に売られている。
英国が東インド会社を設立したのが一六〇〇年。アジアの特産物スパイスをめぐって欧州列強が壮烈な戦いを起こしたが、最終的には英国がインドで覇権を確立、自国領とした。マドラス、ボンベイなどを拠点に盛んに東方貿易を行った。その時にカレー料理が英本国に伝えられた。
一七七二年、初代インド総督・ウォレン・ヘスティングが帰朝の土産として「カリー」と「インド米」を時のヴィクトリア女王に献上。以来、英王室料理に加えられて、ヨーロッパ全域に拡がっていった。
同時に「カレー粉」も英国で商品化されて、カレー料理法とともに普及していった。一八世紀末頃のことだったそうである。