地域ルポ 東陽町(東京・江東区) 下町の新興住宅地 出遅れるFFショップ
地下鉄東西線東陽町。東京の南東部は江東区にあって、区の中心地に位置する。この路線は東京(中野)・千葉(西船橋)間を文字どおりに東西を結ぶ地下鉄(地上をも走行する)で、地域の有力な鉄道となっている。この路線は茅場町、日本橋、大手町といった都心のビジネス街およびショッピングゾーンに乗り入れており、地域から東京へのアクセスを容易にしている。東陽町から大手町方面へは昭和41年10月に開業したが、44年3月には西船橋までの全線が開通した。
一日の平均乗降者数は一〇万五〇〇〇人、下町の新興住宅およびビジネス街として、バブル経済時代までは高層住宅やオフィスの建設が盛んだったが、現在は鳴りをひそめた状況で、駅利用者も横ばいで推移している。
しかし、地域には神戸製鋼や明治生命といった大型の事業所や銀行、証券会社など、また路線バスの乗り入れもあって、来街者も多く、独自の賑わいをみせている。このため、ビルの一、二階などテナント出店での飲食店舗の存在が目につくほか、ホテル施設などの展開も目に入る。
永代通りと四ツ目通りがクロスする東陽町西口交差点。永代通りは片側三車線の広い通りで、左右道路に沿ってオフィスビルや高層集合住宅が点在する。
四ツ目通りは片側二車線道路で、永代通りに比べ狭いが、錦糸町駅に通じるバス道路でもあるので、バスが頻繁に往来しているほか、近接地に江東区役所や都立深川高校があるので、人の往来で“商店街”らしい雰囲気を呈している。
このため、これら人の流れを当て込んで喫茶、レストラン、居酒屋、うどん、弁当ショップなど飲食店舗が軒を連ねている。
しかし、ハンバーガーやドーナツ、フライドチキンといったファストフードチェーンは見当たらない。これは東口の飲食ゾーンでも同様で、東陽町にはFFチェーンが未進出という状況にあるようだ。
FFショップは存在しないが、「一八〇円コーヒー」のドトールコーヒー(東陽町西口店)が展開している。
西口の交差点から四ツ目通りを錦糸町方向五〇mほど行った右側で、三年前にオープンしたFC店だ。以前喫茶店だったのをスクラップ&ビルドしての出店だ。
店舗面積二一坪。通りに面しているので、朝、昼、夜途切れなく客が利用しており、大手喫茶チェーンとしての存在を強くアピールしている。
ドトールは東口のメトロハイツ東陽(一五階建て高層アパート)一階にも出店しており、地域では二店舗を展開する。
東口店(東陽町店)もFC店で、九年前のオープン。営業時間午前7時30分から午後9時まで。
ブレンドコーヒー一八〇円、アイスカフェ二〇〇円、ジャーマンドック一九〇円、レタスドック二二〇円、ミラノサンドA(ローストビーフ、生ハム)三五〇円などのメニューを提供しているが、両店ともに平日は店舗周辺のサラリーマンやOL、土・日には地域の住民に利用されている。
西口交差点の角地。九階建ての高層マンション「山屋東陽ハイツ」一階にコーヒー&パブ「峰」、二階に生そば「習志野庵」とイタリアンパスタの店「伊太利亭」の三店が出店している。
このマンションは一五、六年前に完成。峰、習志野庵の両店はマンション竣工時からの出店だ。
伊太利亭は七年前のオープンで、姉妹店が亀戸、新小岩、津田沼にある。店舗面積三〇坪、客席数四八席。
イタリア産の麺、手づくり、オリジナルソースのパスタ二〇種(八八〇~九五〇円)と、自社工場のケーキ一二種(三五〇~四二〇円)が売りもので、メニューの内容からして若い女性層を主体に支持されている。
昼間はパスタ・サラダ・ドリンク・ケーキをセット(九九九円)をセットにしたランチも提供しているが、平日はOL主体(八割)、土・日はファミリー客というように客層が変わる。
客単価は昼夜平均して一二〇〇円くらい。月商一〇〇〇万円前後。営業時間は午前11時30分から午後9時30分。夜は8時以降は客足が遠のくことと、アルバイトの確保が難しいので、閉店が早くなるとのことだ。(加藤店長)
このマンションの裏手に永代通りに平行して一本道が走っているが、高層アパート「ジャパンハイツ東陽」(七階建て)の地下一階や地上一階に、いけす道場「魚家」をはじめ、居酒屋「ぱあぷる」、串焼「あわ」、オールドスコッチバー「ベルズ」、すし「ねのひ」、「鮨陣」などが出店している。
これらの店は一〇年から七、八年前のオープンだが、夜はサラリーマンなどの来店で連日の賑わいをみせており、西口交差点エリアの“飲み屋街”という雰囲気をアピールしている。
西口の交差点を錦糸町方向に渡って、四ツ目通りを行く。この通りには交差点から一〇〇mほど、深川高校あたりまでに店舗が点在しており、“ミニ商店街”を形成する。
前記のドトールコーヒー(東陽町西口店)もこのエリアに展開しているわけだが、飲食店舗としてはドトールの並びに、お好み焼・鉄板料理「大和」、弁当ショップ「能登屋」、そして、一本路地を入ったところ、三階建てビルの一階にそば・うどん店「初代そば兵衛」が出店している。
都心のビジネス街を中心にチェーン展開している「小諸そば」(三ツ和グループ)の経営で、今年1月にオープンした新装店だ。
店舗面積一五坪、客席数三二席。メニューはもりかけ一八〇円、かき揚げ、イカ天そば各三二〇円、キノコ、山かけそば各三八〇円、エビ天そば、力うどん各四三〇円、天丼、かつ丼各四〇〇円など。
この店から通りに出たところ九階建てビル「東陽町信栄ビル」の一・二階に、日本料理店「かにかに」が出店している。「にほんばし亭」「すし・HANKO」などをチェーン化するラムラグループ(東京・墨田区)の経営で、平成3年のオープン。
店舗面積は一、二階合わせ八〇坪。客席は一階六〇席、二階七〇席の計一三〇席で、地域では有数の大型レストランだ。
店の看板料理は屋号どおりの「カニ料理」。オホーツク産のフレッシュな料理を売りものにしている。
人気メニューは、特選かにしゃぶ飲み放題コース五〇〇〇~八〇〇〇円(四種)、かにかに御膳一六五〇~三五〇〇円(四種)、かにづくし料理四五〇〇円、六五〇〇円、かに鍋二六〇〇~三八〇〇円(四種)など。
四ツ目通りをはさんで、この店の向い側に居酒屋が二軒出店している。
小さなビルの一階に出店する「くろ兵ヱ」と、南隣のビルの二階に出店する「どんどん」で、オーナーは同一人物だ。
くろ兵ヱは一五年前のオープン。地域の老舗格の居酒屋で、“オジサン族”に支持されている。
どんどんは去年11月の開業。以前は会社事務所が入居していた空間だが、事務所が立退いたので、それに代わっての出店ということだ。
店舗面積四五坪、客席数八〇席。この店は隣のビルのくろ兵ヱに対し、“ニュー居酒屋”というコンセプトで、“屋台村”的なメニューを売りものにしている。メニューはおでん、焼とり、お好み焼、鉄板焼など一三〇品目(中心価格四八〇~五八〇円)。
客層は若者が主体で、くろ兵ヱとは棲み分けしているということだ。客単価はくろ兵ヱが三〇〇〇円前後、どんどんが二五〇〇~二八〇〇円。
東口周辺(東陽町四丁目交差点)、永代通りに沿ってもビルの一、二、三階に飲食店が軒を連ねている。
このエリアは、運転免許試験場への通り路でもあるので、人の往来が活発だ。ドトールコーヒー東口店もこのエリアに出店しているわけだが、ドトール以外には大手居酒屋チェーンの「養老乃瀧」をはじめ、「はせ川」「大漁」(居酒屋)、中国料理「天菜」、うなぎ「大和田」といった飲食店舗が出店している。
表通りだけではなく、路地裏に入ってもマンションやオフィスビルの一、二階に飲食店が点在する。東口と西口を中心にして、東陽町の飲食ゾーンは拡大しているという印象を強くする。