宅配寿司 TOTO寿司、ずばり高品質・低価格

1996.04.01 98号 12面

鮮魚店が手掛ける「TOTO寿司」は、平均月商一〇〇〇万円を上げる超繁盛の宅配ずし店だ。鮮魚店ならではの目利きと、本業と一括した大量仕入れで、一般のすし店にも勝る品質を格安で提供している。最近は売れすぎて宣伝を控えているものの、噂がクチコミで広がりオーダーは日に日に増える一方。現在の三店舗を足がかりに近々チェーン展開に乗り出す考え。

「TOTO寿司」を手掛けるのは横須賀市近辺のSM内で鮮魚チェーンを展開する魚勝水産(株)。「鮮魚販売のサービス強化の一環」(田沼勝一代表取締役)として宅配ずしに乗り出した。

同店のすしはとにかく高品質で低価格だ。ネタについては宅配ずしのイメージがまるでない。「ネタはすべて鮮魚チェーンとの一括仕入れ。仕入れ価格は一般のすし店よりも三~四割は安いはず。一般すし店に勝るとも劣らぬ品質を相場の約二分の一の価格で提供している」と胸を張る。

最近はオーダー過剰気味であることが悩みの種。「サービス強化で始めたのに対応が追いつかない」現状を招いている。ポスティングは近隣の一〇〇〇世帯に抑えるほどだ。売上げの半分をテークアウトで占めることもデリバリー効率化の足かせとなっている。だが「店頭販売でまじめにお客に接することで信用が生まれ、デリバリーのオーダーにつながる」とし、テークアウトと宅配の二本柱は当分崩さないという。

同店は過剰オーダーの悩みを解消すべくドミナントで今年中にあと三店出店する予定。機を見てチェーン展開にも乗り出す考えだ。

「団塊の世代が高齢化し、食の嗜好が肉から魚へシフトし始めている。もとよりすしの潜在需要は大きい。

いままでできなかった“早く届ける”“低価格”“高品質”を可能にすればすし市場はまだまだ伸びる」と、抱負を語る。だが一方で「以前、鮮魚店業界は集客にあたりテークアウトの包装ずしなど、さまざまな加工戦略を講じてきた経緯がある。宅配ずし店は鮮魚店よりも利益率が二~三倍もあり、他の鮮魚店も宅配ずしに参入する可能性が高い。宅配ずし業界も品質、価格競争に突入するのでは」と来る競合激化を懸念する。

いずれにせよ、同店のようなやり方が一般化すれば、すし市場が活性化するのは間違いなさそうだ。

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