話題の飲食施設 東京ジョーズ(東京・赤坂)メーンは米・マイアミの名物料理
地下鉄銀座線赤坂見附から2~3分。外堀通りに面した8階建てビルの地下一階。地味なオフィスビルに加え、赤坂の繁華街とは離れたところにあるので、店の存在は目立たない。「Tokyo Joe’s」の小さな赤色のネオン管とカニマークの看板がなければ、一見の客は見過ごすところだ。階段をつたって店へ下っていく。重味のある扉を開けて中へ入る。うす暗い。店は木造り感覚。シックで本格的なディナーレストランという趣だ。店舗面積250坪、客席数240席。今年3月でオープンして11年になる。
米フロリダ海域でしか獲れないという「石ガニ」(爪料理)、マイアミの名物料理でアメリカを除けば日本でしか食べられない。
それも東京、大阪でしか食することができないという“限定料理”だ。味は毛ガニ、タラバガニほどの繊細さはないが、ボリューム感と野趣が売りものだ。マヨネーズとマスタードを主体にしたソースで食べるのが、この料理(素材)の引き立たせ方だ。(写真)
メーンの料理はもちろん「ストーン・クラブ・クロウ」(石ガニの爪)だ。この料理は本来はアメリカ・フロリダのマイアミにある「ジョーズ・ストーンクラブレストラン」でしか食べられないものだ。
石ガニはフロリダ沿岸で獲れる野趣味豊かな食材だ。右ウデの大きい日本のシオマネキに似た大型のカニで、世界では唯一フロリダ海域でしか獲れない。
10月中旬から5月ごろにかけてが漁獲シーズンで、日本へは瞬間冷凍したものが空輸されてくる。
胃袋の大きい本場アメリカでは生育七~一〇年、一ピース五〇〇~六〇〇gが多く提供されているが、日本では三~五年ものが主体で、一ピース七〇~八〇gとスモールサイズだ。
一匹の石ガニから二本の爪。大きいものでは赤ん坊の腕くらいはある。日本では小ぶりのものを提供しているということだが、オーダーがあれば、一ピース一五〇~二〇〇gのものも提供できる。
爪はあらかじめCKで解凍、ボイルされたものが店へ配送されてくる。店では客が食べやすいように爪を二つに割り、盛付けするだけ。調理の必要がない。素材提供の料理、食材としての生産性は高い。
テーブルへはマヨネーズとマスタードを主体にした特製ソースを添えて出す。身は毛ガニやタラバガニほどの繊細さはないが、ボリューム感と野趣味があり、それが客の食感を満足させる。
アメリカ・フロリダ海域だけで獲れる特産素材、料理を提供する店も限られる。すでにこの点において石ガニ料理の特性、優位性がある。
この料理は一九一三年、今から八三年前、フロリダ・マイアミのセイウイッツ一族が経営する「マイアミ・ジョーズ・ストーンクラブレストラン」でお目見えした。
マイアミは全米はもとより、世界各国から富豪、観光客が集まってくる世界有数のリゾート地だ。マイアミでしか食べられないオリジナル料理。客に大受けしたというのはいうまでもない。
それ以来、マイアミ・ジョーズはセイウイッツ一族(現オーナーはアーウィン・セイウイッツ氏)が三代に渡って経営を続けてきており、マイアミの名物料理として親しまれている。
このマイアミの名物料理が一九八二年(昭和57年)3月、(株)ダスキン(本社・大阪)との提携によって大阪一の歓楽街「北新地」にオープンした。
「大阪ジョーズ」(店舗面積約六〇坪、客席数九〇席)がそれ。これはマイアミのホームグランドから世界に出て、最初にオープンしたストーンクラブの店だ。
「東京ジョーズ」はその姉妹店として三年後の八五年3月にオープンした。世界ではマイアミの“本店”を除けば、日本には二つもの店があり東京、大阪にいながらにして、マイアミ・ジョーズと同じカニ料理が食べられるということだ。
東京ジョーズは店の規模が大きいので、メーンのダイニングルームに加え、個室、宴会対応の客席機能ほか、バーコーナーもあり、カップル、グループ、宴会、ファミリー客まで幅広い利用が可能だ。
料理はもちろん、「ストーンクラブ・クロウ」が売りもので、この主力メニューはジャンボサイズ(三ピース六五〇g)七五〇〇円、ミックスサイズ(六ピース四五〇g)五五〇〇円、スモールサイズ(六ピース三〇〇g)三八〇〇円など。
店の看板料理であるのに加え、単価も高いので、この分野で全体売上げの六割を占める。
取り合わせ、コースメニューはディナーメニューのお勧めだ。「フロリダディナー」七〇〇〇円、「ストーンクラブディナー」八〇〇〇円、「ジョーズスペシャルディナー」九〇〇〇円の三品目。
ブレッド、クラムチャウダー、ハウスサラダ、カニ粥または季節のご飯、キーライムパイまたは季節のシャーベット、コーヒーまたは紅茶が共通メニューで、これにロブスター&ストーンクラブ、ストーンクラブ、シーフードプラタのメーンディッシュが一品付くという料理内容だ。
石ガニ料理に加えては、旬の素材の一品料理や肉料理も揃えている。
シーフードではサーモンマリネ九〇〇円、甘エビの刺身九〇〇円、ホタテ貝のオーブン焼き二二〇〇円、大はまぐりのスチーム二八〇〇円、ソフトシェルクラブ二五〇〇円など。
肉料理ではポークバックリブ三三〇〇円、グリルドスパイシーチキン三五〇〇円、サーロインステーキ四二〇〇円などを提供。
「ビジネスですから客数を多く取って、グロスの売上げを出していかなければなりませんが、しかし無理はしない。“食べ放題、飲み放題”とか、価格の引き下げとか、客数を多く取る営業策として、いろいろと低価格策を打ち出すところが多いようですが、私どもの店はそういったことは一切やりません。コスト軽減と収益力の向上に努力はしますが、基本的には質のいい料理とサービスで、集客力を維持していくという考え方です」(東京ジョーズ総支配人阿部正文氏)
しかし、現実は厳しい。ここ数年は客単価、客数ともに伸び悩みにあるのだ。
客単価の向上はともかくとして、集客力をどう高めていくかが当面の大きな課題だが、雰囲気が売りもののディナーレストランでもあるので、“マスセールス”は禁物で、固定客づくりなど集客をどう安定させていくかが重要なポイントだ。
客単価昼一五〇〇円、夜九〇〇〇円(飲み物含む)客数は昼約一〇〇人、夜三〇〇人。売上げは月商六〇〇〇万円以上。
対前年比でみれば売上げはアンダー気味だが、しかし、ポストバブル時代の高額ディナーレストランとして善戦しているといえる。
「この店は高単価、非日常性のレストランですから、二、三ヵ月に一回くらいの割合で利用していただければ、この固定客のローテーションとフリー客で、店は十分にやっていけます」(阿部総支配人)
継続的な法人、官公庁利用は一〇%引きの特典がある。東京の“名物料理”として店の存在をアピールしているということだ。
総支配人阿部正文氏。この店を任されて四年。収益力向上のため二年前に人員を削減して、人件コストを大幅に引き下げた。
新たな課題は質的サービスの維持と集客力の向上、さらなる固定客づくりだという。
・店名 東京ジョーズ
・業態 ディナーレストラン
・所在地 東京都千代田区永田町二‐一三‐五赤坂エイトワンビルB1
・電話 03・3508・0325
・事業主体 (株)ダスキン(本社/大阪・吹田市)
・オープン 昭和60年3月
・店舗面積・客席数 二五〇坪、二四〇席
・売上げ 月商六〇〇〇万円以上(食材コスト三四%、荒利六六%、純益三~四%)
・営業時間 月~金午前11時30分~午後3時(ランチタイム)、5時~11時(ディナータイム)、土・日・祝日11時~11時。
・総支配人 阿部正文
・支配人 伊坂修