新横浜ラーメン博物館・中野正博広報課長インタビュー ラーメンの現状と展望は?

2016.01.04 442号 15面

 日本食の人気ランキングで常に寿司とトップ争いを演じるラーメン。近年の急速な海外普及により訪日客からの視線も熱い。そこで、新横浜ラーメン博物館・広報課長の中野正博氏に、ラーメンにおけるインバウンドの現状と展望について聞いた。

 ●「啜る」の啓発が課題 一見で理解できるトンコツに軍配 ベジタリアンメニューが有望

 -業界の対応は?

 中野 大都市圏では、すでにラーメン目的の訪日客が珍しくなく、来店客の4割が外国人客という店もあります。対策としては、従来通りの店もあれば、メニューを多言語で表記したり、ベジタリアンラーメンを用意する店も増え始めています。外国人スタッフの採用も目立ちますね。

 -訪日客の反応は?

 中野 かつては、訪日して初めてラーメンを食べてファンになるケースが多かったのですが、最近は、母国で食べ慣れたラーメンを「本場で食べてみたい」という、目的意識が明確な訪日客が目立ちます。そして、本場(日本)の「おいしい+種類豊富+多店舗」に感動するのですが、何より価格に驚きますね。欧米相場の約半値、アジア圏と比べても同価格帯ですから、圧倒的な値打ち感に満足しているようです。

 -訪日客の嗜好は?

 中野 スープの嗜好は総じてトンコツ志向です。おいしいに加え、「何時間もかけて白濁スープを作っている」ことに価値を見出しています。醤油や塩に対しては「家庭調味料」という認識があり、価値を感じてもらいにくい。味噌は「高級調味料」とイメージされ、トンコツに次いで人気です。また、欧米人は見た目で判断する傾向があります。醤油や塩のような清湯スープだと表面に浮かぶ脂が目立ちます。彼らはそれを見て「オイリー」だと感じているようです。トンコツはスープと脂が乳化しているため「ヘルシー」に見えるようです。

 -対策のカギは?

 中野 残念ながら依然、ラーメンは「スープ料理」と捉えられているようです。海外では「啜る」ことがマナー違反ですが、啜ることは「空気を取り込み鼻から香りを出す」という「おいしさを増幅」させる行為です。啜らないでラーメンを食べると、あまりおいしくありません。なので、そのメカニズムを知ってもらうことが重要でしょう。

 -今後の課題は?

 中野 2020年に向けてインバウンドはさらに加速します。欧米人の10%はベジタリアンです。4~5人のグループ客の1人がベジタリアンだと、ベジタリアンメニューがない店は選ばれません。あれば、さまざまな宗教にも対応ができますので、今後に欠かせないキーワードになると思います。

 ●プロフィール

 中野正博(なかの・まさひろ) 1974年兵庫県神戸市生まれ。留学したオーストラリアで外から見る日本食の素晴らしさに感銘を受け、日本の食文化を世界に発信すべく、帰国後98年「新横浜ラーメン博物館」入社。現在は同館の広報・宣伝の他、ラーメン店の調査・誘致・企画などを手掛けている。

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