外食業界イイね!TOPICS:フードシェアリングサービス「TABETE」
●フードロス解決の突破口に 廃棄削減と食品尊重を両立
年間1兆円(原価)に迫るとも叫ばれる飲食店と量販店のフードロス。国を挙げた解決策が急務となる中、廃棄削減と食品尊重の両立を図るWebプラットフォーム「TABETE(タベテ)」が注目を集めている。売り手の無駄を抑制し、買い手のお得を演出し、地球環境にもやさしい、まさに三方よしの事業モデルとは?
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「仕込んだランチが売れ残った」「ドタキャンで食材が余った」。そんな飲食店の悩みに応えるのが「TABETE」。2018年4月にコークッキングが開始した飲食店専用(パンや弁当などの小売店も含む)のテイクアウト販売アプリである。
飲食店はアプリを通じて余剰食材を使ったテイクアウト料理を出品。すると、アプリ登録客の端末に出品が通知され、購入客はアプリ上で予約・決済して、店に取りに行くという仕組みだ(右図参照)。出品価格は通常よりも2~3割引きが相場。アプリ登録客は、任意の店舗を「お気に入り」に設定しておけば、該当する出品だけが通知される。
店は食材破棄を削減、客は割安で購入、自治体はゴミが減るという、三方よしの利点が評価され、環境省グッドライフアワード・環境大臣賞優秀賞など数々のビジネス賞を受賞した。
現在のアプリ登録数は、店・約540軒、客・約22万人。東京を中心に大阪、横浜、名古屋、浜松、金沢などの自治体と連携してドミナント展開している。ホテル(ビュッフェ)やスーパー(デリカ)からの問い合わせも増えており、22年末までに店・1万5000軒、客・200万人の登録を目指す計画だ。食品メーカー、食品卸との連携も視野に入れている。
●三方よしの事業モデルに脚光
○「店よし」
・店の廃棄削減
・売上げUP/コスト削減
・ブランド力UP
・新規顧客
○「食べ手よし」
・手軽に社会貢献
・新しい店を発見
・おいしい食事を安価で購入
○「地球によし」
・フードロスの削減
・エネルギー効率UP
・市民の社会的意識向上
●欧米では14カ国・2万軒・2000万人が活用
(株)コークッキング 代表取締役CEO 川越一磨氏
2016年にデンマークで開発された余剰食品販売アプリ「Too Good To Go」をヒントに「TABETE」を開発しました。「Too Good To Go」は、今やデンマークから欧州14ヵ国に広がり、登録数は店・2万軒、客・2000万人に達すると聞きます。私自身、大手外食チェーンの現場で働き、仕込みのロスや食べ残しの多さを実感してきました。料理スタジオを始めてからは、改善の糸口を探ってきました。「TABETE」はフードロスを削減し食品への尊重を啓発するWebプラットフォームを目指します。
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◇TABETE登録ユーザールポ
●宣伝効果に魅力、トライアルに期待
エコロロニョン エドモン/由加里・カマロ店主
昨年末「TABETE」に登録しました。週2~3回、ランチの余剰料理をテイクアウト出品しています。販売単価は650円、販売数は1回平均3食ほどです。余剰料理を廃棄するのは心苦しいし、まかないで消化するにも、小規模店だと限界があります。そんな悩みの解決に好適だと思います。正直、金銭的なメリットは考えていません。それよりも「出品→アプリ通知」の宣伝効果に魅力を感じています。当店の「トーゴ料理」はマイナーな専門料理。興味があっても二の足を踏む方が多いので、認知度はイマイチです。「TABETE」を通じたトライアル購入と試食に期待しています。
○店舗情報
店名:エコロロニョン
所在地:東京都港区赤坂2-17-72 イーデンビル2階
●賞味期限切れに活路、無駄を避けた心地よさ
原宿ダッチ パスタラボ 足立義紀オーナーシェフ
昨年、自社ブランドのレトルトパスタソースを1100袋、ロット製造したのですが、賞味期限が2年のところを誤って1年と明記してしまい、販売予測で150袋が売れ残ることに。そこで賞味期限の2ヵ月前、「TABETE」に登録して、パスタソースを使ったテイクアウトメニューを出品しました。イートインより多少鮮度が落ちるとはいえ、具材やパスタは同格で、品質もグレードも遜色ありません。イートインで1200円のメニューを680円で出品したので、お値打ち感も抜群。開始から日販3~4食を続けて無事、期限前に使い切りました。利益的には難しくても、余剰を活用できて満足です。店の宣伝にも効果があったと思います。
○店舗情報
店名:原宿ダッチ パスタラボ
所在地:東京都渋谷区神宮前1-10-37 カスケード原宿2階
●まかない交換の感覚で小型店でも価値を実感
トリウオ 恵比寿店 井上龍一店主
「TABETE」開業後、すぐに登録しました。以来2年以上、週1回・3パックのペースで出品しています。焼き鳥屋なので、前日に串打ち状態で残った焼き鳥を、翌日に焼いて「5本・400円」で提供しています。うちは基本的に、ロスが出てもまかないで消化するので、廃棄することはありません。しかし、まかないで焼き鳥ばかり食べているのも飽きてしまいます。ロスの出品販売を、まかない原料(原価)との交換と考えれば、利益がなくても十分に魅力的です。アプリ通知による店の宣伝も期待できますしね。
小型店でも利用価値を実感できるので、大量の余剰が出る大型店なら、なおさらだと思います。
○店舗情報
店名:トリウオ 恵比寿店
所在地:東京都渋谷区恵比寿4-10-8 エビスビル1F