焼肉トレンド:タン塩に新潮流 ネギタン塩の課題を克服する「密封焼き」

2020.06.01 496号 16面
「上ネギタン塩焼」3,000円(税抜き)※店舗により異なる 縮まず、剥がれずおいしさアップ!

「上ネギタン塩焼」3,000円(税抜き)※店舗により異なる 縮まず、剥がれずおいしさアップ!

厚切りタン 単品3,300円(税抜き)

厚切りタン 単品3,300円(税抜き)

上タンしゃぶ焼 1,680円(税抜き)

上タンしゃぶ焼 1,680円(税抜き)

 焼肉の人気ランキングで必ず上位3品に入る「タン塩」。そのタン塩で新たな調理法が注目されている。ネギタンのネギが落ちないように工夫した「上ネギタン塩焼」、通称「密封焼き」である。タン塩の発祥である叙々苑では、2010年ごろに登場してから年々人気が上昇。いまやタン塩(4種類)注文の過半数を占める勢いだ。

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 タン塩(レモンダレ添え)は、叙々苑の新井泰道会長の考案と成功により、全国の焼肉店に広まった。その新井会長が「タン塩の新定番」と推すのが、ネギタンをブラッシュアップした「密封焼き」だ。

 ネギタンは見るからにおいしそうだが、焼くとネギが落ちてしまうため、思うように食べられないのが不評だった。タンでネギを包んで焼く方法もあるが、それでもタンが焼けると肉が縮んで剥がれてしまい、やはりネギが落ちてしまう。

 そんな課題を克服したのが「密封焼き」だ。(1)カットしたタンをローラーで伸ばしてコシを抜く(2)タンを折ってネギを包む(3)タンの縁を密着させ密封する、という調理法である。この手法なら、タンの縁が密着して剥がれず、適度に縮んで食感も向上。ネギが焦げず、ネギの風味とタンの肉汁が密封され、ジューシー感を維持。ネギタンの課題を解決するだけでなく、おいしさも格別にアップするのだ。

 タンの厚さ、ローラーの使い方、縁の止め方などは、叙々苑のノウハウであるため、詳細を知りたければ、直に食べに行ってほしい。新井会長は「タンは弾力が強いのでローラーによる品質変化はあまり気にしなくてよい」とヒントを語る。

 ありそうでなかった本質を突く創意工夫が叙々苑の真骨頂。その典型ともいえる「密封焼き」は必見必食だ。

 ●タン塩の発祥とは?

 持ち味を生かしレモンでさっぱり

 タン塩は、いまや欠かせぬ人気部位だが、商品化されたのは、それほど古くはない。1976年、創業当初の「叙々苑」が初めて提供した。それまでタンといえば、もみダレに絡めて提供するのが普通で、提供する店も少なく、マイナーな部位だった。当時の新井泰道店主は、タンの持ち味を生かすため、塩で下味を付け、さっぱり感の演出としてレモンダレを添えた。すると六本木界隈の女性客から大人気を獲得。これを手本にした商品化が全国に広がり、「焼肉はタン塩から」という習慣も定着した。

 ◆店舗情報

 「叙々苑」

 本社所在地=東京都港区六本木6-1-24 ラピロス六本木5階

 ◆切り方で表現するタン塩の芸術

 ◎厚切りの美学 切り角が美しい裏表の包丁技

 「味と美の演出」で高評価されている岡山の焼肉店「東風」。同店の盛り付けは大胆かつ繊細、彩り鮮やか、絶妙な足し引きが秀逸、と定評がある。中でも、厚さ1cm、縦横8×20cmほどの厚切りタンは美しい! タン1本から2枚しか取れない大きな盤形が自慢。当日にサク取りしてマイナス1℃で保管しておき、提供寸前に包丁を入れて、左右を引っ張って伸ばす。ピンと立った切り角の見栄えが見事。表は90度、裏は45度に包丁を入れるのがポイントだ。

 「東風(コチ)」 所在地=岡山市北区西古松2-24-16

 ◎薄切りの美学 薄ベタ正方形の美しさが見事

 埼玉県で5店舗を展開する「セナラ」。「美食」と「健食」の両立が自慢の名店だが、「きれいな四角」を基調にした盛り付けは一見の価値あり。この店自慢の「上タンしゃぶ焼」は、1枚の寸法は、長辺約22cm×短辺約5cm×厚さ約2mm。きれいに並べた薄ベタ正方形の盛り付けが素晴らしい。規定寸法の長方体にカットし、ラップにくるんで型枠に入れて凍結。凍結後、型枠から外して2mm厚にスライスカットしている。焼き方では片面焼きを推奨。焼網にのせたら、10秒ほどで内側に巻き寄せて、一口で食べるのがベストだ。

 「セナラ」 経営=(株)コーフク/本部所在地=さいたま市大宮区北袋町2-424

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