外食最前線:ますます求められる特別感 高価格帯の業態が拡大

【北大路倶楽部 CREATIVE ITAMAE】10月31日まで展開している「板前和牛料理フルコース」(1万2,000円・税込み/ドリンク飲み放題込み)で提供される「和牛シンシン寿司」。和牛寿司をスモークする演出も見もの
外食に特別感が求められている昨今、他店では味わえない料理や食材を打ち出す「専門店化」が進んでいるが、そうした潮流に加えて高価格帯で展開する「高級志向」に挑戦する例も増えている。「高級志向」にシフトした象徴的な2店の事例を見ていこう。
7月にオープンした「焼鳥しるべ」は、横浜市内で「炭焼四季 鳥導」「炭焼四季 鳥しるべ」を展開するTargetの3号店。「鳥導」が平均客単価2000~3000円、「鳥しるべ」が4000~5000円に対して、「焼鳥しるべ」は6000~7000円と、「鳥しるべ」ブランドにおける最上位の位置づけとしている。酒飲みが親しむ“庶民的な焼鳥店”といった風情の前2店とは一線を画し、「焼鳥しるべ」は伊達鶏を使用し、備長炭で1串ずつ丁寧に焼き上げた焼鳥を提供。焼き鳥としては高価格といえる3000円と4500円の2種類のコースを用意している(21時以降はアラカルトメニューも注文可能)。店内は盆栽や生花を配し、銘木のテーブルとオーダーメイドのチェアを設置した、ワンランク上の品格のある空間。庶民価格で焼鳥を気軽に楽しみたい層は「鳥導」を、もう少し落ち着いて楽しみたい時は「鳥しるべ」を、高級感のある味と空間を求めたい時には「焼鳥しるべ」と、シーンに応じて使い分けできる同ブランドの横展開というわけだ。
一方、接待店で知られる「個室会席 北大路」を運営する大東企業が“対面での接客”に重きを置いた10席のみの“隠れ家”カウンターレストラン「北大路倶楽部 CREATIVE ITAMAE」は、従来の「北大路」ブランドの中でもさらなる“特別な空間”を謳っている。同店では数カ月ごとに「焼肉」「寿司」など業態テーマを入れ替える異色のスタイルで、1種類のコースのみを提供する。若い料理人がお客と直接向き合い、緊張感を持ちながら料理の技を披露するというのも特徴的だ。お客の目の前で料理を仕上げ、料理人自らが一人ひとりに提供することで、若手の成長の場として機能していると共に、特別感をも打ち出しているのだ。7月から10月31日までは「板前和牛料理フルコース」(1万2000円・税込み/ドリンク飲み放題込み)を展開しており、第1部18時~、第2部20時15分~の2時間入れ替え制。
今回紹介した2店は「高級志向」に向けて、「同ブランドにおける高級店の選択肢」と「特別感ある体験価値」という異なるアプローチをしており、興味深い。
●店舗情報
「焼鳥しるべ」
経営=Target/店舗所在地=神奈川県横浜市中区宮川町2-48-2桜木町Tsビル1階/営業時間=17時~23時。無休/席数=35席
「北大路倶楽部 CREATIVE ITAMAE」
経営=大東企業/店舗所在地=東京都中央区銀座8-5-12第二ウルワシビル6階/営業時間=第1部18時~、第2部20時15分~(2時間入れ替え制)。日祝休/席数=10席