アポなし!新業態チェック(85)「エッグセレント」
●朝活を支援する卵料理カフェ 企業再生リヴァンプの独自業態
昨年11月、企業再生を手がけるリヴァンプが東京・港区の六本木ヒルズに「朝食の定番である卵料理」を中心とした新業態「エッグセレント」を開業した。経営は新しく設立された同名の法人。事業発案者である元全日空の国際線乗務員、神宮司希望氏が取締役COOとして運営に当たる。
メニューは、卵料理や自家製のイングリッシュマフィンを中心にした朝食メニュー、米国の卵料理の定番、エッグズベネディクトやパンケーキなど。エッグズベネディクトはスタンダードな「オリジナル ベネディクト」(1200円)のほか、マフィンではなくライスをベースに置いた「アボカド・マグロ エッグセレント ベネディクト」(1500円)や「ミラネーゼ ベネディクト」(1300円)など5種類。パンケーキは「エッグセレント パンケーキ」(1000円)ほか3種類。ステーキやサラダ、サンドイッチなども取り揃えられ、ドリンクはソフトドリンクのほかにビールやカクテル、ワインなどのアルコール類も用意されている。同店で使用されている卵や乳製品、ジュースなどは、それぞれ選定した生産者のものを使用し、店内でつくられている食材も多い。テラス席も含めて100席近い客席を持つ大型店の店内には、内装などに卵形のモチーフがあしらわれ、ナチュラルな素材を生かしたカフェ風のデザインだ。
リヴァンプはこれまでにも、「クリスピー・クリーム・ドーナツ」やプレッツェルの「アンティ・アンズ」など、海外の著名ブランドを輸入して成功させているが、今回は独自に開発した業態で新たな展開を図る。
★けんじの評価
ここ数年“朝食カフェ”とでも呼べるような飲食店の新規開業が続いている。米国のスタンダードな朝食メニューを揃えたカフェスタイルの飲食店だ。パンケーキブームという外見的なトレンドに隠れてはいるが、これは居酒屋を中心とした夜型外食スタイルがすでに崩壊しつつあるというひとつの証明でもあるのではないか。実際、同店は六本木という立地にありながら何と午後9時に閉店してしまう。臨店したときも来店客の大多数は女性で、他の取材店の多くでも同様だった。同店のようにビールやワインなどのアルコール飲料を置いていても、どの店も「酒を飲む」ために利用する場所でないことは明らかだ。モノのトレンドではなく、コトのトレンドとして捉えるべき現象だと感じる。
エッグセレントの事業発案者である神宮司氏は、スカイツリー内のカフェ店メニューをプロデュースするなど食のプロフェッショナルであるだけではなく、準ミス日本受賞という美貌の才媛だという。女性の視点でつくり上げた同店を、リヴァンプが得意とするプロモーションで盛り上げ、開業時の話題づくりは十分だった。この新業態が多店舗化を期待できる業績を上げることができれば、同社の評価も多いに高まるだろう。
しかし、筆者の個人的な願望を言わせてもらえば、「世界の“朝文化”を提案する」というコンセプトだというのなら、日本で卵を使った「メニュー」の定番となっている卵焼き、あるいは焼き海苔、納豆、味噌汁などといった和食の朝食アイテムも取り揃えてほしかった。和食はいまや、世界中で注目を集めている食の文化遺産なのだから。
(外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)
◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期からFFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。
●店舗情報
開業=2013年11月5日/所在地=東京都港区六本木6-4-1、六本木ヒルズ、ハリウッドビューティプラザ1F