宅配サービスの注目株(11)宅配車両を持たない宅配専門店 フレッシュデリ「Fresh Deli」
店舗名のロゴを付けて街中を走る宅配車両を見かけない日はない。だが、そうしたバイクなどの物流ツールを一切持たず、東京23区内全域を商圏に、平均月商1200万円を誇る宅配繁盛店がある。プレミアムサンドイッチを売り物とする「フレッシュデリ」だ。
「フレッシュデリ」は、東京・港区赤坂の高級住宅地にある。同業店の宅配ライダーだった畑雅文氏((株)フレッシュデリ社長)が1997年7月、一念発起して独立開業したものだ。以来順調に売上げを伸ばし、最高月商1600万円にまで到達。その後、宅配商圏の拡大を視野に入れ、2007年7月、中央区茅場町に2号店目となる日本橋店を開業した。
開業から2~3年ほどは、畑氏自らがバイクで配達していたが、あるバイク便業者との出会いから、「もちはもち屋。自分は商品の品質アップに専念し、配達はバイク便に任せよう」と思い立ち、分業化の独自ノウハウを構築した。
また、そのころから、ぐるなび経由のインターネット予約が増えはじめたため、徐々に宅配商圏を拡大。現在、日本橋店との2店舗で東京23区全域をカバーしている。距離や注文数によってバイク便と軽四便とを使い分け、3km圏内ならばバイク便を使わず、店のスタッフが自転車か徒歩で配達しており、帰りがけにポスティング販促を行っている。
当然、バイク便のコストは高いが、宅配スタッフの常駐コストと比較すると利点は大きいようだ。もちろん、こうしたスタイルを維持できるのは、客単価1万円という高効率があってこそ。例えば赤坂店では、1日のオーダー数が約50件。約9割が会社や病院などの法人客だ。午後から夕方にかけては、宴会向けの大皿需要も多く、1回に10万円という注文も少なくない。
バイク便業者も、メニューチラシの配布を行うなど販促活動に協力的だ。「バイク便業界は競合が激しいので、こうした新規開拓が増えるはず」と、畑氏は見ている。
赤坂店の初期投資は約600万円。「そのかわり、作り手の技術に投資してきました」と畑氏。実は、畑氏には調理技術があったわけではない。しかし、商品数を絞り込み、パッケージデザインにこだわり、品質第一で臨んだ結果、「おいしくて、おしゃれなサンドイッチ」という評判が定着。やがて、興味を持った洋食出身の料理人が集まりだし、それらに惜しみなく人件費をかけることで、店の実力を向上させてきた。午後7時閉店ながら客単価1万円、月商1200万円という数字は、その確かな技術力の表れといえよう。
また、有機食材、無添加調味料、産直野菜など、食材選びにも妥協はない。「1個も100個も同じように作る」という信念が、遠方からも支持を得る原動力となっている。
今後は、「オープンキッチンとイートインを併設した大型店を作り、アンテナショップのような形で、食に役立つ情報発信を手掛けたい」と、畑氏は語る。
◆「フレッシュデリ赤坂店」/経営=(株)フレッシュデリ/所在地=東京都港区赤坂7-5-33 ベルバン赤坂1階、電話03・3224・9876/営業時間=午前9時~午後7時、土日祝休日/店舗数=2/年商=約2億円/店舗平均月商=赤坂店・1200万円、日本橋店・500万円/人気メニュー「クラブハウスサンドイッチ」(1200円)、「BLTサンドイッチ」(950円)、「アボカド&マッシュルームサンドイッチ」(1260円)