近代メニュー革新!繁盛レシピ研究所:王朝「冷やし麻辣拌麺」 生野菜がおいしい四川風サラダ麺
東京ディズニーリゾートの一角に立地する「ヒルトン東京ベイ」の中国料理店「王朝」は、有名店がひしめく舞浜エリアで不動の人気を誇る。場所柄、観光客主体かと思いきや、むしろ宮本荘三料理長の味にほれた地元客の方が多いという。その常連客らの強い要望で今春から登場した「冷やし麻辣拌麺(マーラーバンメン)」が早くも看板料理と化している。
「冷やし麻辣拌麺」(1750円)は早い話、麺に辛みだれをあえて、野菜をたっぷり添えた“ラーメンサラダ”。飯店風に正せば“四川風冷やし麺”だ。中国伝統の拌麺(汁なしあえ麺)を日本発祥の冷やし中華風にアレンジした、ありそうでなかった新旧融合、日中友好の革新麺である。
実はこの「冷やし麻辣拌麺」、常連客の間では知られた裏メニューだった。宴会料理の一品として出していたところ、常連客から「一品料理として食べたい」という特別注文が年々増えたため、今春からレギュラーに昇格した。すると、早くも日販20食(ランチタイム)を突破。夏本番を前に一番人気に躍り出る勢いだという。
宮本荘三料理長は、「冷たいので辛みがスッキリして食べやすい。シャキッとした生野菜と辛みだれの相性も抜群」とし、「サラダ感覚でシェアされるケースも多いので、ランチだけでなくディナーでも多くの注文が期待できます」と声を弾ませる。
そもそも“冷やし拌麺”という料理は中国に存在しない。拌麺は本来、ゆで上げた麺とたれを混ぜ合わせ、炒め物などをのせて食べる、中国の大衆麺料理。麺にたれがよくなじむよう、麺が熱いうちにたれを混ぜ合わせるのが調理特徴だ。したがって、たれがなじみにくい“冷やし”は、無いに等しかった。そこに着目したのが“宮本流冷やし拌麺”だ。
宮本料理長は、「麺を冷水で洗って冷やすと、たれがなじまず、流れてしまいます。これを防ぐため芝麻醤を多めに加えて、たれの粘度を高めました」と調理ポイントを説く。
主役の辛みだれは、花椒辣油、香辣油など10種類の調味料をブレンドしたもので、辛みとうまみを両立させる、微妙なさじ加減が腕の見せどころ(レシピ別掲参照)。また、麺との食べ合わせの相性をよくするため、野菜をピーラーで薄くカットするのもポイントだ。
「飯店は、独創的な麺料理で新規客を呼び、ファン層を地固めする時代を迎えています。看板となる麺料理の有無が明暗を分けるでしょう」と語る宮本料理長。
飯店麺ブームの先駆けとして注目されるところだ。
○王朝(千葉県浦安市舞浜1-8 ヒルトン東京ベイ内)
◆宮本料理長オリジナルレシピ 「冷やし麻辣拌麺(涼生菜拌麻辣麺)」
■材料(1人前)
生麺(卵太130g)豚ひき肉(30g)ニンニク(みじん6g)ヤーツァイ(10g)サンショウ粉(少々)
※オリジナル調味料(醤油15ml、砂糖1.5g、酢2ml、黒酢2.5ml、ごま油4ml、花椒辣油4ml、香辣醤2g、芝麻醤2g、辣油8ml、辣粉1g)
生野菜(水菜40g、ラディッシュ2個、ニンジン20g、セロリ20g、サラダ菜20g、キュウリ20g)、仕上げ野菜(白髪ネギ10g、糸唐辛子1g、中国パセリ2g)、サラダ油(20g)
■作り方
(1)水菜とサラダ菜は適当にカットし、ほかの野菜はピーラーでスライスカットする。
(2)鍋にサラダ油を熱し、豚ひき肉、ニンニク、ヤーツァイ、サンショウ粉を炒め、別皿にとる。
(3)生麺をボイルし、冷水でよく洗い、水を切る。
(4)ボウルに調味料を入れて混ぜ、(2)と(3)を加えて混ぜ合わせる。皿に(4)を盛り、(3)をあしらい、仕上げ野菜を添える。
◆エバラで再現!模擬レシピ
オリジナル調味料の代わりに「麻辣麺スープ40ml」と「芝麻醤25g」を混ぜて使う!
◇使用食材:「麻辣麺スープ」
刀削麺に使われる西安料理の代表的スープ「麻辣麺スープ」を手軽に再現する業務用ラーメンスープ。花サンショウのしびれる辛み「麻」と唐辛子のシャープな辛み「辣」を併せ持つ、真っ赤な彩りが特徴。3種の醤(豆板醤、コチュジャン、甜麺醤)をベースに2種類の味噌(豆鼓、赤だし味噌)を加えてコク深く仕上げている。温・冷の麺スープはもちろん、鍋料理や炒め物の調味にも最適。野菜にマッチする商品設計なので、野菜と辛みのカプサイシン効果を合わせて打ち出せば、ヘルシーメニュー開発も自由自在。使用方法は、冷やし麺の場合は水で同割希釈。温麺の場合はお湯またはがらスープで4~5倍希釈。
荷姿=1560g×6本入り
◇王朝・宮本莊三氏から
辛いだけではなく、花サンショウや黒コショウなどの香辛料が生きており、万人受けする味わいですね。なにより鮮やかな赤色が食欲をそそります。麺類はもとより、野菜とも相性がよい。ニンジン、キャベツ、モヤシなど味の薄い野菜と合わせると、辛みとマッチして、野菜が格別においしくなります。また、真っ赤な彩りを生かして、中華丼のあんに使うとユニークです。料理人の創作意欲をかきたてる万能調味料といえるでしょう。
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宮本莊三(みやもと・そうぞう) 1952年北海道生まれ。中学卒業と同時に上京。新宿「美華」で3年間ラーメン店の出前持ち修業後、小田急ハルク「豪華」、銀座「東京飯店」、旧・東京ヒルトン「星ケ岡」、新宿・東京ヒルトン「王朝」を経て現職に。実力・人気ともに中国料理界のトップを走る。