中華料理特集 外食史に残したいロングセラー探訪(34)桂花ラーメン「太肉麺」

2009.11.02 365号 06面
今でこそ一般的なラーメントッピングであるが、当時は「角煮」という料理を具材に使う発想は衝撃的であった

今でこそ一般的なラーメントッピングであるが、当時は「角煮」という料理を具材に使う発想は衝撃的であった

東京進出第1号の新宿末広店。ここでも太肉麺の1日食数は約150杯。どの店舗でも太肉麺は50%前後

東京進出第1号の新宿末広店。ここでも太肉麺の1日食数は約150杯。どの店舗でも太肉麺は50%前後

 1968年に東京に初出店し、以来、熊本ラーメンの存在を世に広めてきた桂花ラーメン。ラーメンとサラダの組み合わせや、海藻を練り込んだ麺など、さまざまな工夫を凝らしたメニューを生み出してきたこの店において、現在でも50%以上のお客が注文するヒットメニューが「太肉麺」だ。

 ◆東京出店記念メニューとしてデビュー 5割以上のお客が注文の超定番商品

 豚骨とチキンのがらのうまみを時間をかけて取り出し、天然塩で味付けした豚骨白湯スープ。太めで硬め、歯切れのよさを信条としたストレート麺。そして麺とスープの調和に欠かせない、ニンニクを使った魔法の油「マー油」……という大きな3つの特徴が挙げられる桂花ラーメンの創業は、1955年のこと。以来、新店を出すごとに新しいメニューを1つ加えるというスタイルをとってきた桂花が、1968年の東京初出店の際に考案したのが「太肉麺」だ。

 太肉(ターロー)とは、厚みのある豚の3枚肉を使った、いわゆる角煮。豚の角煮は九州の人たちにとってなじみのある料理だが、ラーメンの具材として使うという発想はなく、それまでチャーシューの薄さに慣れていた当時のお客にとっては驚愕のボリュームであった。

 口の中でトロッととろけるほど軟らかい太肉は、まず約3時間コトコトと煮て余分な脂やアクを抜く。そして、ラーメンの豚骨塩味のスープと合わせても嫌みにならない一歩手前で味付けをした醤油のたれをじっくりと染み込ませて、塩味と醤油味の対比を際立たせている。また、砂糖ではなく、香味野菜や玉ネギ、みりんなど使った自然の甘みにもこだわる。

 そして、トロッとした食感の太肉に仕上げるために、良質の脂が多めの3枚肉を使用しており、現在は千葉県の協力農場から直接仕入れている。

 この太肉という名称は、正式に中国料理にあるものではなく、創業者の久富サツキ氏が、出来上がりの形を見て名付けた、桂花独自の造語である。発売以来、この太肉をまねた商品が多く出回り、ラーメンにボリュームのある肉のトッピングが一般化しているのは周知の通り。2007年に「太肉麺」「ターローメン」は、商標登録されている。

 もう1つ、太肉麺に欠かせないトッピングが、生キャベツである。「毎日、お腹に入るものは体によいものを」と、栄養のバランスを大切にしていたサツキ氏の考案で生まれた組み合わせだ。

 とろける軟らかさの太肉とシャキシャキのキャベツの食感の対比も面白いが、キャベツの甘みも楽しめ、さらに口の中がさっぱりとする役目もある。

 太肉麺にはそのほか、ゆで卵をチャーシューのだしで煮た味付け卵(ルータン)や茎ワカメ、メンマ、ひともじ(小ネギ)も添えられている。

 もはや熊本ラーメンの老舗ともいえる桂花ラーメンだが、約40年間もロングセラーを続ける「太肉麺」を求めて、今日も多くのファンが訪れている。

 ◆店舗データ

 「桂花ラーメン」/経営=(有)桂花本店/本社所在地=熊本県熊本市和泉町168-2/開業=1955年6月/店舗数=「桂花ラーメン」14店舗(2009年8月現在)

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