外食史に残したいロングセラー探訪(62)ロイヤルホスト「オニオングラタンスープ」

2012.04.02 397号 08面
琥珀色の上品なコンソメと玉ネギの甘味のコラボは心身ともに温める

琥珀色の上品なコンソメと玉ネギの甘味のコラボは心身ともに温める

ファミリーレストランの先駆けとして、外食産業の発展への思いのこもった店舗

ファミリーレストランの先駆けとして、外食産業の発展への思いのこもった店舗

 外食産業に多大な影響を与え、ファミリーレストランの先駆けともいえるロイヤルホストは、昨年40周年を迎えた。数々のヒット商品を生み出してきた同店だが、そのなかの一つに「オニオングラタンスープ」がある。透き通った琥珀色の上品なコンソメと玉ネギの甘味のコラボは、身も心も芯から温め、幸福感を与える看板メニューだ。長年、消費者に愛され続けているオニオングラタンスープを紹介する。

 ◆手鍋で作るレストランの味を大切に モンローもとりこにした味

 同スープがロイヤルホストに登場したのは、1986年だが、その歴史はさらにさかのぼる。1971年に北九州市にロイヤルホスト1号店が開店。ロイヤルの味の原点ともいうべき、高級フランス料理店ザ・ロイヤル(現在、大濠公園内にあるレストラン花の木)が福岡市中州に創業したのが1953年。同店のシェフによって作られたのが最初である。

 そして有名な逸話として語られているのが、女優マリリン・モンローと夫のジョー・ディマジオが新婚旅行で来日した際、同店に足を運び、気に入った料理だったという。今では全店で提供され、1日1店舗あたり10食前後は出るほどスープとしては異例の人気を誇っている。

 ロイヤルホスト(株)・商品企画部の橋本哲也部長は、「創業者は、日本全国のお客さまにおいしい料理を食べてもらいたい。そのためには飲食業を産業化しなければいけないとの思いから、セントラル・キッチン(CK)を持ち、コックを育て、チェーン展開を試み現代に至っています。CKがなければ、全国のお客さまにこのスープを提供することは不可能でしょう」と話す。

 調理は、コンソメスープと具となる玉ネギがポイントとなる。福岡にあるCKでは、牛肉のひき肉と香味野菜をひと晩じっくり煮込んでからこす。その過程で出るあくや脂を人の手によって丁寧に取り除き、雑味と濁りのないクリアなコンソメスープを完成させる。味の決め手となる玉ネギは、あめ色になるまで丁寧に炒める。その都度、シェフによるチェックが入る、どちらも手間暇のかかる工程といえよう。そして、お店でそれらのスープにクルトンとチーズをのせてオーブンにかけて完成する。

 「CKでは、シェフが手鍋で作るのと同じように作っています。ですから、手の込んだ料理といえます。鍋が大きくなっただけで手を抜かない。『コックのいるレストラン』とは店舗だけでなくCKにもいえることです。CKと現場によってロイヤルホストの味は支えられています」と橋本部長は説明する。

 CK=機械化、大量生産の一面もあるが、同スープだけに限らず同社の商品には、肝心なところは人の手によって作られる。そのこだわりは、外食業を産業化したいという創業者の思いの継承であり、さまざまなエピソードがつまったロングセラー商品としてお客に支持されている要因となっているように思える。

 ●企業データ

 ロイヤルホールディングス(株)/本社所在地=福岡県福岡市博多区那珂3-28-5/事業内容=外食事業「ロイヤルホスト」「てんや」「シェーキーズ」、コントラクト事業(空港内・高速道路内・商業施設内・介護施設内)、機内食事業(福岡・関西)、ホテル事業「リッチモンドホテル」を運営。グループ合計747店舗。2011年12月現在)

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