フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(40)テンアライド ジリ貧状態を抜け出せるか

2015.03.02 432号 11面

 テンアライドの社名をご存じない方でも、「天狗」を全国展開している居酒屋チェーンといえば、あの赤い顔の天狗(てんぐ)の看板を思い出されるのではなかろうか。創業は1969年と50年近い歴史を有し、「養老乃瀧」「村さ来」と並ぶ居酒屋の老舗チェーンである。

 ここで「天狗」「養老乃瀧」「村さ来」と老舗居酒屋チェーンの看板名を並べて気付くのだが、いずれもここ数年来、マスコミはもとより外食業界でも、ほぼ話題に上らなくなったことである。

 この現象は、今の居酒屋業界の不振を表す象徴的な事実でもあるといえる。同社に限らず、居酒屋離れ→赤字店の増加→業績不振→店舗閉鎖→ブランド認知の低下→居酒屋離れという悪循環にすっぽりとはまって、抜け出せないでいる居酒屋業界のその他大勢のチェーンにも通じるのだ。

 余談だが、居酒屋業界で最近、知名度が上がった唯一の存在は「和民」くらいではなかろうか。むろん本来のあるべき姿とは違う意味で話題となったわけであり、当のワタミグループとしても不本意であろうが、居酒屋業界にとっても「ワタミ=ブラック企業、居酒屋=ブラックな職場」というイメージが世間一般に浸透しつつある影響から、女性客が減ったり、ただでさえ採用難の状況にさらに拍車をかける事態となっている。

 最近のジリ貧状態を擁護するわけではないが、「天狗」も同じ居酒屋業界の有名チェーンの一社として、今回のワタミの悪評の影響を受けていることは想像に難くない。

 弊社では、本紙にて主要外食チェーンの昨対売上げ(既存店ベース)の推移を毎月まとめており、読者の方なら目にされたこともあるかと思うが、ご存じの通り居酒屋業界は前年比で減収が続いており、いまだに下げ止まった感はない。

 中でも当社、テンアライドが特に深刻なのは、「客単価」の下落に歯止めが掛からないことである。店の売上げ=客数×客単価からすると、「和食れすとらん 天狗」など食事性の高い業態の展開もあり、客数の減少には一定の歯止めがかかりつつあるが、客単価は2009年9月の1773円から、2014年9月には1500円(全直営ベース)と、この5年間で実に約15%も下がっているのである。

 一方、店舗数に関しては、2009年9月の138店舗から、直近2014年9月は126店舗と、東日本大震災後に不振店を一気に閉鎖したことから店舗数自体は減少しているものの、2011年9月の120店舗をボトムとして、若干だが回復傾向にある。

 しかしながら、全体の業績は2012年3月期売上高157億円→2013年3月期売上高153億円→2014年3月期売上高150億円で推移しており、ジリジリと、しかし着実に下がり続けており、2014年3月期にはついに通年を通して営業赤字(▲130百万円)にも転落してしまった。

 ここ最近は出店の再開や集客に取り組んだことで、客数の回復という一定の成果は出ているが、客単価の下落に歯止めが掛からないため、ジリ貧状態から抜け出せないまま赤字に転落という、いわば嫌な予感が当たったかのような後味の悪い状況だ。これは、単に「少子高齢化の影響」とか、「若者のアルコール離れ」で説明がつくような問題ではないのではないか。

 この状況に対して、当社経営陣はどのような手立てを打つのか期待したい。テンアライドの自己資本比率は70%近くで、外食企業の中では財務内容が比較的良いことが唯一の救いであり、そこに活路があると感じられるからだ。今後のIR情報に注目していきたい。

 ◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛けるほか、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。

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