オタフクソース創業100周年 感謝と笑顔の100福年

調味 2022.11.25
オタフクソース創業100周年 感謝と笑顔の100福年

 オタフクソースは、11月26日に創業100周年を迎える。同社は、創業者・佐々木清一が「人のお役に立ちたい」という思いから1922年に広島市横川町で酒と醤油類の卸小売業として創業された。その後、消費者の好みに合わせて数種類の醤油や酒を調合する技術を生かし、酢造りを開始。調味料製造メーカーとして着実に前進を続けた。45年の原爆投下で焼け野原となりながらも酢造りを再開。焼け野原で広まったお好み焼き店に向けたソース造りを開始すると、ニーズに沿ったソース造りが人気を呼び、同社の看板商品へと成長を遂げた。82年には業界に先駆けてフクボトルを採用し、家庭用ルートに本格的に参入。現在では「オタフクお好みソース」を置いていない店を探す方が難しいほどの配荷率となっている。この「オタフクお好みソース」は、広島市から「ザ・広島ブランド」に認定されるなど、広島を代表する銘品として確固たる地位を築くとともに、業界でも「お好みソース」という新たなカテゴリーを創出した功績も大きい。創業以来の精神である「笑顔あふれる社会づくりに貢献する」次の100年に向けた新たな挑戦がスタートした。(中国支局長=浜岡謙治)

 ●鉄板粉もの文化普及 広島から世界へ発信
 オタフクソースは、1952年お好みソースを誕生させた。それは、ソースメーカーとして後発で卸問屋などには扱ってもらえず、致し方なく当時広島で広まり始めていたお好み焼き店へソースを持って行ったことにはじまる。そのころ、お好み焼きにはサラサラとしたウスターソースをかけており、お好み焼き店の店主から、「お好み焼きにかけたら流れ落ちて困る」と悩みを聞く。その困りごとを解決しようと何度も改良を重ね、とろりとして辛すぎないお好み焼きに合うソースを開発。その後、メニューに合う調味料の開発を進め、「焼そばソース」「たこ焼ソース」も展開した。
 広島県内を中心に営業活動を続けていたが、品質を安定させて生産体制を整え、瀬戸内経済圏へ、そして東京・大阪へ進出した。87年「東京お好み焼研修センター」を開設し、開業を目指す人々へ技術や経営ノウハウを伝える店舗開業支援研修を実施。地域に愛されるお好み焼き店を全国に広めたいという思いから、その後全国8ヵ所(仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、広島、高松、福岡)に設置している。
 98年、世界で唯一の「お好み焼課」を開設。鉄板粉もの文化の普及に取り組み、開業支援研修をはじめ、家庭でおいしいお好み焼き・焼そば・たこ焼きをつくるための教室なども積極的に実施。お好み焼き文化普及のためまずは社員が知識や技術を習得することが重要と考え、2006年社内資格「お好み焼士」制度をスタート。08年には「Wood Egg お好み焼館」を開館し、お好み焼きの歴史や文化を発信する。また、調理体験を通じて広くお好み焼きの魅力を伝え、食文化を発信するため、18年に広島駅構内にお好み焼体験スタジオ「OKOSTA」をオープン。家族連れや修学旅行生、海外からの観光客にも対応するため、豚肉を使用しないムスリムフレンドリー、肉・魚成分を使用しないベジタリアンの方向けメニューなど多様なニーズに応えるメニューを用意している。
 こうして市場シェアの獲得を優先させず、お好み焼きを中心とした鉄板粉もの文化の普及に力を注ぎ、国内にとどまらず世界へも発信し、食卓を囲む幸せな時間をつくることをテーマとして活動している。

 ●FOUNDER’S WORDS 創業者・佐々木清一の言葉
 〈お多福グループ100年の礎となり、この先もグループの指針となる創業者の言葉〉
 ○『人々に喜びと幸せを広めることを自らの喜びとする(たらいの水哲学)』
 「人間、和を保つためには、まず相手を思いやることが先」というお多福の心を、たらいの水に例えている。
 たらいの中の水を自分の方に寄せようと一所懸命手を動かしても、手の動きを止めると水が向こうへ逃げていくが、相手の方に水を差し上げようと手を動かすと、その水がはねかえって自分の方に寄ってくる。
 商売も水と同じで、単に利益を上げたり、幸せを自分の方に寄せ集めるのではなく、世の中に幸せを広めていけば、やがていつのまにか自分のところへかえってくる。
 ○『自然の恵みで天然の味覚をつくる』
 人の体に入るものをつくっているということは、お客さまの健康をお預かりしているということ。
 体に良くない原料は一滴たりとも使ってはいけないという、当社の製造の原点です。
 ○『一滴一滴に性根を入れて』
 ものをつくるには、性根を入れて作ったものでないと売れないし、売ってはいけません。調味料の味を決める際は、自分の舌を信じて、繰り返し繰り返し材料の微調整を重ねていくと、単なる「甘い」「辛い」ではなく、材料そのものの味を感じられるようになります。
 明るくおおらかな人のつくる味はおおらかな味になるなど、つくる人の個性が出てきて、それが味の決定に大きく左右します。
 お客さまに買っていただくためには、コツコツと努力をして、一滴ずつ、真心と性根を込めたものをつくらなければなりません。

 ●受賞歴
 〈平成12年度業務用加工食品ヒット賞〉和食部門受賞 「オタフクお好みソース」
 〈平成18年度食品ヒット大賞〉ロングセラー賞受賞 「お好みソース500gフクボトル」
 〈平成20年10月食品産業功労賞〉生産部門受賞 佐々木尉文・お多福グループ会長(受賞当時=オタフクソース会長)