外食の潮流を読む(118)「学食プロジェクト」により大学の教育的環境がさらに充実していく
ORIENTALFOODS(本社/東京都品川区、代表/米田勝栄〈かつはる〉)では「学食プロジェクト」という活動を推進している。これは、大学の学食運営を学生が主体となって行うもの。コロナ禍にあって東洋大学白山キャンパス(東京都文京区)で行っている活動が注目され、関西の大学から学食運営を任されるようになり、また、東洋大学が学部などを再編して2024年に開学した朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市)の学食運営も一手に任されて実践している。
同社代表の米田氏(51歳)が学食運営に携わるようになったのは、バーの運営を受託していた04年の当時、東洋大学白山キャンパス内のカフェの運営を受託したことに始まる。米田氏は業績を飛躍的に改善し、ここがリニューアルした後も、再び運営を任された(ここの学食はフードコート形式で運営する業者がさまざま存在する)。
その後、同学食は早稲田大学「学食研究会」が発表する「日本一の学食」に2回連続で選ばれて注目を浴びるようになった。
米田氏は、肉バルやキッチンカーの運営も手掛けていて、若い従業員にメニュー作り、ゴーストレストランやキッチンカーの運営を任せると、がぜんやる気を抱き、積極的に提案して働くことを目の当りにするようになった。
そこで、コロナ禍になった頃、東洋大学白山キャンパスでアルバイトをしている学生に「メニューコンテストをやってみないか」と提案。チームを作って、自分たちが作ったメニューを学食のメニューに取り入れるプロジェクトを進めた。すると、これに関わった学生たちが、学食に頻繁に立ち寄るようになった。「自分たちが作ったメニューがどのように食べられているのかを見てみたい、という感覚を生み出したようだ」と米田氏は語る。
これらの取り組みが「カンブリア宮殿」で紹介されて、この話題は全国的なものとなった。そこで、関西の桃山学院教育大学、桃山学院大学、神戸国際大学、関西学院大学から依頼があり、これらの学食を運営することになった。米田氏はこう語る。
「コミュケーションが苦手だった学生が学食でアルバイトをするようになり、メニューコンテンスなどを経験していく中で、この分野の能力が著しく高まります。就活で内定を20社から獲得したり、接客が苦手だった女子がテーマパークに就職を決めたり。ポジティブになった事例がたくさん生まれています」。
米田氏は「大学は生き残りをかけて、盛んに新しい試みを展開している。学食には今、クオリティーが求められている」と語る。
オープンキャンパスで親御さんは学食を体験する。そこで行われていることが教育的で、かつ働いている学生たちが生き生きとしていると、親御さんたちに良い印象が刷り込まれる。同社の「学食プロジェクト」は、現在大学に求められているブランディングの一つといえるのではないか。
(フードフォーラム代表・千葉哲幸)
◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。