外食の潮流を読む(119)鶏料理の居酒屋から食事メインに
●出店チャンスが広がり持続可能に
親子丼がメインの「鳥開総本家」というチェーンがある。店名の「鳥開」部分のデフォルメが記憶に残る。現在、名古屋と東京をメインに15店舗展開している。
同チェーンの親子丼は「若鶏の親子丼」(漬物・鶏スープ・小鉢付き、以下同)1220円、「名古屋コーチン親子丼」1690円、「特選名古屋コーチン親子丼」1980円の3種類。「名古屋コーチン親子丼」と「特選名古屋コーチン親子丼」の違いは、前者が、親子丼で使用している肉とトッピングの卵黄が「名古屋コーチン」で、溶き卵だけが「国産卵」であるのに対し、後者は使用している卵のすべてが「名古屋コーチン」である。
同チェーンはプログレ(本社/名古屋市中区、代表/西村和則)の経営。代表の西村氏(55歳)が飲食業で独立したのは2000年のこと。焼き鳥、唐揚げをメインとした居酒屋「鳥開」(10坪)を名古屋駅の西口にオープンした。その後、アルコール主体の居酒屋を、1年に1店舗のペースで出店していく。
名古屋には当時既に鶏肉をメインとした居酒屋として「風来坊」と「世界の山ちゃん」という二大巨頭が存在していた。西村氏は、新規参入であってもこれらに勝つ方法を考えた。
この2つのチェーンは鶏肉でも手羽先がメイン。それに対して焼き鳥や唐揚げを充実させた。さらに、「朝引き鶏」であることをアピールした。この文言は、ほかの居酒屋に対して圧倒的な差別化となった。二大巨頭の客単価は2000円あたりであったが、「鳥開」は3000円を超える店となった。
現在の主力業態の「鳥開総本家」は居酒屋から食事メインに転換した業態である。その理由は、会社を持続可能なものに整えようという発想から。「社員はいつまでも若くはなく、いずれは家庭を持ちたい。そこで、食事メインの業態をつくり、夜の営業に偏らない商売をしよう」と考えた。この転換は07年のこと。
これによって、営業時間の主力が日中にシフトして労働環境が大きく改善され、出店場所が飲食店街や路面だけではなく、商業施設やフードコートにも出店できるようになった。また、全国丼コンテストで8回優勝したことから知名度を上げて、テイクアウト専門の店舗も展開するようになり、さらに、海外でFC展開を進めるようになった。
主力事業が食事メインになったことで、経営数値も安定してきた。客単価は昼夜を通して1800円から2000円あたり。原価率は28%、FLコストは52~53%となっている。
これからの展開ついて、西村氏はこう語る。
「店を増やすことは3年後ないし5年後に行うとして、しばらくは社員教育に力を入れる。それは、近年出店コストが高くなっていて、投資回収がこれまで3年だったものが5~7年になってきているから。いま急いで出店するのではなく、これからの店舗展開に備えて、生産性の高い店の仕組みづくりをしていく」。
持続可能な会社づくりは、10年先を見通すようになった。
(フードフォーラム代表・千葉哲幸)
◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。