弁当FC最前線・エリアフランチャイズ制の問題点を探る:エリアFC運営の難しさ

2002.06.17 254号 5面

◆エリアフランチャイザー運営の難しさ

取材を進めていくと(株)ライズに対して、加盟店からこのような声が聞こえた。

「ほかの地区本部と比べ、(株)ライズでは条件がよかっただけにすぎない。利益をもらいすぎていたかもしれない」「本部指定業者以外の加盟店の自主的な独自仕入れが認められなくなった点は確かに痛い。しかし、食材は以前のブロックごとの納品から個別包装に流通加工された状態で納品へ変化され、店舗におけるインストア加工の手間は少なくなった」「(株)ライズと比べるとプロモーションが多くなった」「(株)ライズのオーナー会は欠席者も多く、いい加減であった」

(株)ライズの管轄していた千葉・神奈川地区の店舗の実績はチェーン全体から見ても、あまりよいとはいえず、(株)ライズの運営にも問題がなかったとはいえないであろう。そして、(株)ほっかほっか亭へ運営が切り替わってからの最初の3月20日のオーナー会では、「(1)契約を遵守する(2)積極的な営業活動を行う(3)あるべき姿を実現する」という方針の説明を加盟店に行い「本部の奉仕に従えないなら解約してもらっても結構」という旨も加盟店に伝えたようだ。

しかし、(株)ほっかほっか亭と各加盟店とのコミュニケーションがシッカリしていたとはいえない。

営業時間の件も、比較的緩やかであった(株)ライズの方針から、売上高のために午前7時から午後11時までを標準とした年中無休体制にしましょうという旨を、加盟店との十分な協議なしにいきなり突きつけてしまっては、加盟店から不満も出るであろう。まして、次回契約更新の際には、契約書で明示されることとなる。

また、「(株)ほっかほっか亭との業務提携に関するお知らせとご依頼」という表題の承諾書についても、「押せといわれたから押した」「内容は見なかった」「文字も見えない薄暗いところで印を要求された」というような加盟店の声にあるように、(株)ライズから(株)ほっかほっか亭へ運営が切り替わるという重みを認識せず内容を十分に理解しないまま加盟店は印を押してしまっている。また、3月20日のオーナー会も、その内容は加盟店にとってみれば非常に重いものであるにもかかわらず、加盟店の中には欠席した方や内容を覚えていない方が非常に多い。

ビジネス経営者としての加盟店の姿勢に問題がなかったとはいえないが、本部としてはシッカリとした説明を行う義務はあったであろう。事実、加盟店を不安にさせ、他チェーンと比較した中での厳しい条件(図表2参照)で行っている加盟店の不満を招いてしまったことは明白だ。

特にほっかほっか亭FCは、もともと契約よりも精神的なつながりがつよかったFCチェーンである。(株)ライズのもと、本部を信じ本部の言うとおりに店舗運営を行っていた加盟店に対し、説明不十分でいきなりの方針変更はやや厳しいといわざるを得ない。このようなコミュニケーションの行き違いから、「(株)ほっかほっか亭の言う通り、心を入れ替えてオーナー会にも出席し、有料のセミナー((株)ほっかほっか亭主催)にも交通費や宿泊費や参加費を自主負担して出席し、言われるままに店舗改装(約二〇〇万円の費用)を行い、営業時間も午前7時~午後11時に変更したが、ちっとも売上げが上がらない。本部からの請求額も払えなくなったが、そうしたとたんに店を止めろと言われ、材料も取るなと言われ、金融機関への借入を踏み倒してでも本部への請求額は支払えと言われた」という声が加盟店から上がってしまうのだ。

(株)ライズを買収し(株)ほっかほっか亭を一〇〇%子会社とし、かつ、(株)ほっかほっか亭総本部の四四・四%の株式をも所有している(株)プレナスは、株式を店頭公開している企業であるから、株主に対する利益責任・配当責任も当然ある。また、加盟店運営から始まった(株)プレナスは、「統一化・標準化・差別化」が重視されるチェーン形態において、シッカリとしたチェーン運営を行っていかないと自分たちが窮するという認識もあるであろう。

外食市場は四年連続で前年比ダウンという傾向があり、有望である中食市場の競争も激化しているので、気持ちは分からなくもない。しかし、ライズ地区の不採算店舗二〇店閉店という文面をFC店の気持ちも考慮せずに、4月22日の決算説明会資料(ホームページでの閲覧が可能)で載せてしまったりしているようでは、あらぬ誤解も受けよう。

フランチャイズシステムとは契約を主体としたビジネスである。しかし、だからといってコミュニケーションなくビジネスはできない。承諾書の印という問題では片付かないであろう。ビジネスは、「人対人」が行うものであり、システムが行うものではない。最終的には客に気持ちが伝わらなければ売上げは上がらないのではないか。

もともと、エリアフランチャイズシステムは、エリアフランチャイザーの存在があるので、本部と客との距離が非常に遠い。チェーン全体をシッカリと運営・管理・統括・指導・統制をしていかないとこのような問題が起こる。

「気持ちのこもったあったかいお弁当を売りたい。気持ちよく販売したい。それだけなのに。このままではお客様に申し訳ない」

加盟店の声がむなしく響く。

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