名古屋版・若手No.1経営者外食を語る:jGroup社長・新田治郎氏

2003.01.15 264号 34面

■野武士魂

すい星のように現れた新進気鋭の経営者、jGroup社長の新田治郎氏は、「やっとわれわれ、野武士の時代が到来する」と断言する。名古屋の飲食店が飽和状態にある今、激戦を勝ち抜いてきた強い野武士のごとく足腰のすわった飲食店のみが、外食界を切りひらいていくと考える。

一九九七年以来の飲食店バブルは二〇〇〇年にピークを迎えた。出店ラッシュによる市場はオーバーフローで食い合いが始まり、その結果必要とされる店とされない店が明確に分断されるに至っている。

一方、「国民総生産は五七%を占めていた『モノ』という『ハード』から、美容やファッション、英会話などの『ソフト』へ、不景気であっても消費者は自分自身を磨くための投資には惜しみなくお金を使うことへ移行しはじめている。そこにはシーンも含めての飲食ニーズも加わり、カリスマオーナーの飲食店がブランド化するなどトレンドの主役にもなった」。

しかし、来年に向け廃業店は圧倒的に増え、あるデータによると一〇〇店がオープンする一方、一一七店が廃業しているとまでいわれる。新田氏流にいうなら、逆境に強い野武士魂を持つ者のみが底力は発揮して勝負に出る時代に突入する。

■サービス業の原点は人

jGroupの人件費比率は高い。創業当時より毎年新卒を三〇人ほど採用し、現在社員数は一五〇人。来年度も大卒を含め三七人の採用が決まっている。さらに正社員率を高めていく考えだ。

「人の厚みが、飲食店のクォリティーの高さとなる」

そして社員のためにハコを作り続けることが、新田氏の使命でもあるのだ。

安価で好物件が借りられる現在の環境では、次々に店に投資することで売上げを伸ばし、伸ばせばいい人材が集まってくる。そんな図式を描きながら、jGroupは進化をとげてゆく。

■繁盛の力点

新しい店に飛びついてはすぐ飽きる消費者に標準を合わせ、短命になりがちの店が主流だが、jGroupが展開中の既存店成長率は一〇〇%を超える。その理由をたずねてみた。

「フード対ドリンク、サービス、価格、雰囲気すべてのバランスがうまくとれていることが長続きするポイント」と返ってきた。

現在人気店である「庵GURA」と「てしごと家」を比較した場合、一見似たような店であっても細密に練られたコンセプトは大きく異なる。庵GURAは女性誘導型で、女性が選んで先導するタイプの店。一方、てしごと家は年配のサラリーマンが部下の女性を誘う時に選ぶいいカッコできる男性誘導型の店。となると、庵GURAの店内を、ガラスや尖った石など無機質空間にして、原価率の高いビールや日本酒よりもカクテルが似合う雰囲気にする。客単価は安いけれど利益率を高めるのである。てしごと家の方は、客単価は高いがドリンクはビールが主体のため利益率は低い。

したがって短期間勝負なら移り気な女性をターゲットにする庵GURAで、ロングヒットを狙うならてしごと家と分けて設定している。てしごと家は利益率が低いので席数を確保する大型店にすべきだし、庵GURAは四〇~五〇坪でもできる。「きちんとしたマーケティングに基づいたコンセプトメークをすることが大切だが、でも基本はスタッフの力だということを忘れてはいけない」と一言、釘をさすのも忘れない。

■「ほっこり」と「瀬音」

「~風」が一世を風びした。洋風居酒屋、和風レストラン、韓国風家庭料理等々、店名に、~風と冠をつけることでイメージは広がるものの、店の中身は見えてこなかった。和洋中の垣根をこえた創作料理もその範ちゅうであり、それがまん延し定着した時陳腐化が始まった。

「これからは、~風というわかりにくい表現をやめてズバリ本質を極めることが大切なのではないか。特にグルメ情報が混乱している中で、よりわかりやすさの追求が必要となる。たとえば、洋風居酒屋は洋食へ、コメという限りなく素材に近いコンセプトで…」

新田氏の考えは、8月に「ほっこり」(栄、住吉町)を、11月に「瀬音」(名古屋駅)を生む。ほっこりは、日本人の大好きな白いご飯にこだわり、いわゆる「純和」に行き着いた。瀬音は奥入瀬の渓流美をテーマに、店内には川のせせらぎをイメージした水がさやさやと流れている。

「風の音、水のささやき、自然の創世を感じていただける空間にし、懐かしさややすらぎの宴を楽しんでいただきたい」

飲食店新興地区の名古屋駅から伏見までの広小路通り沿いを、大型店舗の瀬音が占める。周辺はますます活気づき、消費を喚起することになるのだろう。

■いよいよ東京へ進出

新田氏の口癖は、「サービスを提供する者としての自覚を持て」。外食はもちろん食は大切な要素だが、それ以上に「幸福創造」サービス業であるとの考え方だ。

「成長しつづけてきた外食も二一世紀は成熟へ向かうというのが実感だ。だからこそここで外食の原点であるサービスに立ち戻り、社員には、一生懸命に働くことでお客様が幸せな時間を過ごすことができたらこんなにうれしいことはないねと話している」

社員のために、jGroupのクォリティーにさらに磨きをかけるために出店を加速させていく。

中部地区でもっか二三店舗を展開中だが、そのうち新興地区の名古屋駅周辺に六店舗、金山周辺には三店舗とマーケティングを浸食している状況。

名古屋出店はおさえ、来年からはいよいよ首都圏へ打って出る。すでに3月には東京・銀座での出店が決定しており、二〇〇六年までには首都圏出店を中心に、売上げ三〇億円の増収を見込む。

順風満帆に見えるが、実は紆余曲折も経験しているトップマネジャー、新田氏。尊敬する経営者は、九歳にして大阪へ丁稚奉公に入り、松下電器を起こした松下幸之助。

「世の中起こる出来事すべて必要かつ必然で、振り返ってみればベストなタイミングで起きている」が好きな言葉だ。

◆プロフィル jGroup社長 新田治郎氏

一八歳で京都から上京。「マハラジャ東京」に入社し、後に全国の「マハラジャ」を次々に立て直し、その才能がかわれてグループ会社社長に就任、名古屋に来る。一九九七年三〇歳の時、一四七坪の「にんにくや」をオープンさせたことをきっかけに、試行錯誤しながら出店を続けていく。「庵GURA」「てしごと家」「紗LALA」「ほっこり」など、出す店出す店が話題となり繁盛店に。第六期は年商三〇億円を突破する見込み。三五歳。

◆jGroup(名古屋市中区錦二‐一一‐一、電話052・222・4600)

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