百花繚乱!立ち食いそば:「十割そば郷」梅わかめそば
「十割そば」。いわゆる生粉打ちそばの店である。
東京は中央区銀座、「十割そば郷」のかけそば・もりそばは三九〇円。立ち食いそばとしては若干高めの設定だが、銀座のはずれに立地し、広い店内にいすもあり、手順上煮詰まりのないつゆでおいしいそばが食べられるとなれば仕方のないところだろう。
ところでそば粉は割り粉(小麦粉)に比べて火の通りが極端に早い。通常の二八そばは、どんなに細く打っても三分程度のゆで時間が必要となるが、生粉打ちそばのゆで時間は、太さがあっても一〇秒ほど。栄養分の損失も少なく、そばの風味も強く残る。
この店は、ゆで釜の上部に押し出し式の製麺機を設置、打ちたてのそばを直接ゆで鍋の中へ。打ち粉を使用しない分だけ加水率が高くなり、心地よいつるつる感と小気味よい食感が生まれる。
なんと注文前に生地の状態だったそばが、ほぼ一分以内にもりそばとして提供されるのだ。
サラリーマンのお昼は時間との戦い。食事をし、コーヒーやたばこで一服し、本屋や銀行へ寄るとなると一時間では到底足りない。食べる時間はできる限り短く済ませたいというのが本音だろう。
十割そばを売りにしている店に見えるが、店主の本当のこだわりは、「お客さんが一番必要としていることをおろそかにしない」という、ごく当たり前のことであった。
◆「十割そば郷」(東京都中央区銀座七‐一三‐二二)営業時間=午前8時~午後8時(土曜は午後3時まで)、日曜・祝日・第三土曜定休
◆青木剛理=立ち食いそばの発展・認知高揚を目的に、ホームページ「立ち食いそば紀行」(首都圏の立ち食いそば店ランキングなど/http://www.gori.sh//)を主催運営。当連載は約六〇〇軒強の食べ歩き実績から超必見店を紹介。