メニュートレンド:「マグロ×焼肉」新たな価値創造
焼肉のスタイルを魚に応用した業態は、数こそ少ないものの個性的な繁盛店がいくつか存在する。とはいえ魚のモツ(内臓)まで焼いて食べさせる店まではなかろう。マグロ専門をうたい、正肉のみならずモツまでメニュー化した斬新なスタイルでヒットを飛ばしているのが、東京・門前仲町の「マグロスタンダード」だ。
●捨てられていた内臓もおいしく商品化 利益と社会課題解決の両立目指す
マグロ焼肉の商品は16アイテム。4割近くの客がリピート注文する看板商品「本マグロ焼きすき」(2508円)や「大トロ」(1738円)、「中トロ」(1628円)など正肉商品7品。ここまでは読者もイメージしやすいだろう。要注目なのが残る9品のホルモン系。「レバー」(770円)や「ハツ」(715円)は牛豚のホルモン焼きでもおなじみだが、「目玉裏」(825円)や「エラブタ」(660円)などになると、もはや味を想像できかねる未知の領域だ。
一般の焼肉同様もみダレに漬けた状態で提供され、ロストルで焼く。火の入るスピードが早く、焼肉というより炙りに近い感覚だ。正肉系、ホルモン系のどちらも牛肉の焼肉と比べてさっぱりとクセのない味わいで、胃にもたれることがない。
同店の開業は2022年3月。マグロ焼肉を発想した原点はコロナ禍だ。創業店の「マグロと炉端 成る」(東京・錦糸町)を営む中で、代表取締役の宮崎元成さんが食材の仕入れ先業者にヒヤリングした際に「使われずに廃棄されている食材がたくさんある」ことを知り、積極的に活用。それをきっかけに利益と社会貢献の両立を目指す「CSV経営」に関心を深め、実現の一歩としてマグロの廃棄されていた部位を商品化する同店の開発につながったそうだ。さらにマグロ以外にもカット野菜製造時に捨てられていた野菜の外葉などを使ったメニューを開発している。
焼肉アイテム以外にも、マグロの廃棄部位活用が目白押しだ。レバー、ミノ、ハツなど内臓肉は刺身でもラインアップするほか、「名物!!煮込み」(638円)や「自家製マグロメンチ」(473円)を商品化して捨てるところを限りなくゼロに近づける。そうした未開の部位をおいしく仕上げる調味力の高さに脱帽するばかりだ。
23年5月には東京・錦糸町に2店目をオープン。こちらではマグロの寿司もメニューに加えて好評を博している。
●店舗情報
「マグロスタンダード 門前仲町店」
経営=Pay it Forward/店舗所在地=東京都江東区富岡1-25-4 ニックハイム八幡103/開業=2022年3月9日/坪数・席数=20坪・42席/営業時間=16時~0時。不定休/平均客単価=5000円
●愛用食材・資材
「二度仕込み」ヤマト醤油味噌(石川県金沢市)
マグロの風味・うまみを引き立てる
マグロ焼肉のもみダレ、つけダレ、そして刺身醤油に使用。一度完成させた生醤油に、さらに醤油麹を投入する再仕込み製法により、うまみとコクを増幅。深みのある液色は、もみ込んでもマグロの身色を上品に引き立てる。
規格=450ml