メニュートレンド:「黄金とろろ」の独自性 つくね芋の短所をだしで逆転
加瀬料理長は食事の始めに、つくね芋に含まれる「ジアスターゼ」が糖質・脂質・アルコールの吸収を緩和する機能を持つことを説明する。「今日はゼロカロリーだと思って楽しんでください」の一言を添えて、客とのコミュニケーションのきっかけにする。また「ウチスルベ流 つけとろろで食べる黄金明石焼き」では、タコさんウインナーを添えて「すみません、たこが逃げちゃいまして」と言いながら提供して客の笑いを誘う
脇役イメージが強いながらも、時に主役級の扱いを受ける食材の一つに「とろろ」がある。屋号に「とろろ」を冠する店はけっこうな数あるものの、大半はとろろ飯中心の御膳料理に留まる。とろろ(山芋)には、もっと大きな可能性を秘めているのではと考えているところに現れたユニークな店が、東京・千住の「黄金とろろ専門割烹 ウチスルベ」。同店のバラエティー豊かなとろろ料理の一部を紹介したい。
●和洋中韓で多彩なアプローチ
60品ほどを揃えるディナーメニューのうち、とろろ(山芋)料理は45品。実に8割近くを占めることになる。
「当店は最寄り駅から徒歩20分も離れた住宅街のど真ん中。お客さまにわざわざ来ていただくに値する専門性を打ち出す必要がありました」と、とろろ専門業態開発のきっかけについて加瀬雄太料理長は語る。
当初は鹿児島・枕崎産の鰹節を使った「だし料理」の専門店を構想していたが、北海道・十勝産の山芋「つくね芋」に出合ったことをきっかけに2つを融合。「北のつくね芋を南の黄金だしで溶いて作る“黄金とろろ”ならではの味と香りを軸に据えた」と加瀬料理長。SNS発信やメディア露出などをきっかけに認知が徐々に広がり、オープン半年後には来店客の3割が遠方からの目的客で占めるようになった。
つくね芋をだしで溶く独自の手法は苦肉の策でもあった。従来の山芋であれば、すりおろすだけでほどよいとろみに仕上がるもの。ところが同店の仕入れる十勝産つくね芋は粘りが強過ぎて、すりおろすだけではとろみが生じないのだ。欠点になりかねないイレギュラーが、黄金だしと組み合わせるというアイデアを生み出したわけだ。
同店のとろろの特性を最も生かした料理の一つが「ウチスルベ流 つけとろろで食べる黄金明石焼き」だ。たこ焼き生地にもつけ汁にもとろろを使い、だしの割り加減の調整で役割を変えつつ、独自の味を楽しめる設計だ。
「どこにでもある料理だからやらないつもりだったが、当店のつくね芋と他の山芋との違いが明確に表現できる」と加瀬料理長が採用したのが「とろろ明太磯辺揚げ」。熱が入ると餅のようにムチッとした食感になるつくね芋ならではの味を楽しめる。
他にも「山芋とオクラのナムル(700円)」「鯖ととろろの紫蘇春巻き(1000円)」「海老ととろろのスペインさつま揚げ(1600円・すべて税込み)」など、多国籍なアプローチでとろろの可能性を広げる。こうしたスタイルも目的客が集まる大きな原動力となっている。
●店舗情報
「黄金とろろ専門割烹 ウチスルベ」
経営=ウチノイエ/店舗所在地=足立区千住大川町39-14 せんつく3 1階/開業=2025年6月/坪数・席数=20坪・16席/営業時間=11時30分~14時、18時~22時(土曜は17時~23時、日曜は17時~21時)。水曜定休/平均客単価=昼2000円、夜6000円
●愛用食材・機器
「粉わさび(浮世絵)」カネク(東京都青梅市)
料理人の舌も納得 味と機能を両立
「料理人も本わさびと間違えるほどの品質」と加瀬料理長は絶賛。辛味、香り、色、そして舌ざわりまで本わさびに近い、と長年愛用している。保存性が高く、必要量だけ作ることができる機能性も高く評価する。
規格=1,000g(常温)












