外食史に残したいロングセラー探訪(4)「えびめしや」えびめし

2007.02.05 324号 10面

今でこそ、イカ墨を使った料理やブラックカレーなど、「黒い食べ物」が一般的にも受け入れられるようになったが、40年も前に、しかも地方都市に登場し、現在に至るまで大人気を続ける「えびめし」という黒いピラフがある。この「えびめし」を紹介し、岡山名物に育て上げたのが、(株)いんでいら・出井達海社長だ。

今から40年以上前、東京オリンピックのころのこと。渋谷のあるカレー店に訪れた出井氏は、そのカレーのおいしさに惚れ込み、弟子入りをしてカレーの味と作り方のコツを体得した。

その後、1966年に地元岡山に戻った出井氏は、カレーとコーヒーの店「いんでいら奉還町店」をオープンする。このとき、修業先にあったえびめしもメニューに取り入れたのだが、ややスパイシーさを強め、地元の人たちにも受け入れられやすい味へとアレンジを加えた。当時の価格は1皿120円。予想に反してカレーではなく、このえびめしが同店の人気商品となった。

そして1994年には、えびめしをメーンとした洋食屋の「えびめしや辰巳店」をオープン。岡山のB級グルメの名物としての地位を固めていった。

えびめしを初めて食べる人は、まず、その「黒さ」に驚き、ひと口食べて、見た目からは想像のできない甘み、辛み、酸味といった絶妙なバランスの取れた味わいに再び驚く。

この色は、ウスターソースや醤油を使っているわけではなく、カラメルソースの「黒」。特製のえびめしソースには、これに10種類のスパイスと、上質のケチャップを加える。

えびめしの作り方は、まず、エビと玉ネギ、マッシュルームをバターで炒める。そしてご飯に加え、えびめしソースをからめて強火であおり、香ばしさを出す。仕上げに、錦糸卵とグリンピースをトッピングすれば完成だ。季節に合わせて、スパイスの加減を微調整していることも、1年を通してコンスタントに売れ続けている理由の一つだろう。

えびめしやのオープンと同時期に、えびめしを使ったオムライスの「オムえびめし」(単品820円)を考案し、こちらも人気商品として定番化している。現在では、えびめしにハンバーグやエビフライ、グラタンなどを組み合わせたセットメニュー(820~1120円)も充実させ、ランチだけではなく、ディナーの利用にも対応している。

昔のような「ごちそう感」はなくなってきたものの、依然として子どもからお年寄りまで、あらゆる年代の客層に人気がある。親子三代で訪れる客や、週に一度は必ず食べに来る常連も少なくなく、今やえびめしは、地元の人たちにとって、「ふるさとの味」の一つとなっているようだ。

●企業データ

「えびめしや」(岡山県内に3店舗、うち1店舗はFC)/経営=(株)いんでいら/本部所在地=岡山市海吉113─25、電話086・274・3555

◆料理の決め手 三位一体のこだわり素材

エビ=エビとしての香りは若干弱いものの、熱を加えた後の軟らかさ、プリプリとした食感、そして見た目のボリュームを重視し、50/60という大きめのサイズのホワイト(ムキ)を使っている。インドネシア産を中心とした天然ものを指定。

コメ=主に地元岡山県産のコメをブレンドした、「スーパーえびめし米」を使用。「えびめし」の仕上がりは、チャーハンのようなパラパラ感よりも、モチモチとした食感、多少の粘りを求めているため、もち米を配合しているのが特徴だ。

ケチャップ=えびめしソースに欠かせないトマトケチャップは、甘みが強く、濃度も高い国産のものを使用している。

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