本紙限定業界ネタ:新宿牛丼戦争が勃発
甲州街道の新宿四丁目の交差点で、牛丼戦争が勃発した。
交差点を挟んで吉野家の向かい側に、3月31日、牛丼チェーンのすき家がオープンした。
このエリアは半径一〇〇m圏内に、松屋、どんどん亭があり、ショッピングセンターやウインズから流れてくる客を見込み、牛丼チェーンがしのぎを削っている。そこについにすき家が乗り込んできた。
すき家を展開する(株)ゼンショーの小川賢太郎社長は、吉野家の出身で創成期の幹部だった。吉野家が倒産直後、一緒に抜けた専務とともに、すき家をつくった。
この交差点のそばには吉野家の本社がある。その立地に出店したのだから、売上げやシステムに自信がなかったら出せない。吉野家と堂々と渡り合おうという宣誓布告の態勢だろう。
これまですき家はほとんどが郊外店が中心で、駅前や繁華街には出せなかったというのが実状だったと思う。郊外では、吉野家の出店していない所を狙って繁盛している例が多かった。
しかし九七年に株式公開、九九年9月には東証二部の上場も果たした。TVコマーシャルも昨年から本格的に展開している。
ここの吉野家はたぶんチェーンの中では繁盛店のひとつだろう。しかし難点はわざわざ横断歩道を渡らなければならない。
すき家の方が立地条件は良い。このエリアは夜に車で食べに来るお客もいる。吉野家の前の道は車の流れがあって路肩に駐車できない。すき家の方は比較的車を止めやすく、家賃も吉野家より高いだろう。
その家賃を払っても出店したのだから、吉野家の社長もゼンショーの社長も、たぶん相当にこのぶつかり合いを意識しているだろう。
ここで互角の勝負ができれば、すき家にとっても社内の士気が俄然高まるだろう。
すき家は、定番の牛丼のほかにキムチ牛丼やカレー、中華丼などがあり、ファミリーや女性が入りやすいテーブル席が用意してある。
また三階まで各フロアに厨房があるという、ファストフードの常識を破る造りだ。女性客は一階のカウンターではなく、二階のテーブル席に案内している。この前見たら、二階席は女性が半分くらい占めていた。
老舗の吉野家と、全く新しいスタイルを打ち出しているすき家との対決は興味深い。
(林原安徳)