飲食トレンド ブライダル市場に新しい波、レストランで披露宴

1993.09.20 36号 1面

結婚式はともかく、レストランで披露宴(ウェディングレセプション)をおこなうというのは欧米では、ごく普通のことで珍しいことではない。

欧米での結婚式は極めて手作り的で、身内や友人、知人を集めて、自宅や街中のレストランなどで内々におこなうというのが通常的なことで、より生活に密着した祝いごとになっている。

ひるがえって、日本の場合は住宅事情や生活環境のせいもあってか、常に施設主導型で、ホテルや式場といった大型の商業施設でおこなわれることが定着した姿となっている。

しかし、かつては日本でも家で式を挙げるというのが一般的なことで、ホテルや式場で結婚式を挙げるというのは少数派であった。この風潮は昭和四〇年代に入って高度経済成長と共に高まってきた。

ホテルや式場での結婚式は式から披露宴までがパッケージになっているもので、それだけにシステマチックで見栄えがいい面がある。

だが、それだけに費用もかかる。結婚式にかかる費用は利用する施設の形態やグレード、式の規模、内容によって異なってくるが、式場であれば一組八〇~一〇〇名前後で、一人当たり三万五〇〇〇から四万円くらいまで。ホテルであれば一組一二、三〇名で、一人当たり四万から五万円前後といったところで、トータル的には三〇〇~五〇〇万円前後はかかる。

これら式に要する費用は、式場費用をはじめ、衣装、着付、宴会(料理、飲み物)、引き出物などで、このうち最もウエイトが大きいのが宴会(披露宴)費用だ。

結婚式といえば、日本ではホテルや式場でおこなうというのが一般的だが、最近は費用を節約するという意識が高まってきているせいもあって、レストランで式および披露宴をおこなう傾向が強まってきている。

宴会は出席者が一同に会しての会食であるので、最も楽しみなシーンで、料理もそれに見合ったバリエーションと華やかさがある。

料理は洋食を中心として、和食や中国料理をミックスした型式のものが多く、一人当たり二万~三万円前後というのが一般的な相場だ。

この金額は料理のバリエーションを別にすれば、会席料理やフランス料理など街中の高級レストランと比較しても、はるかに高い金額といえる。

結婚式は人生の大事な祝いごとであるので、料理にもそれだけの内容(華)がなくてはならないということだが、しかし、最近はパターン化したレセプションスタイルを敬遠して、個性的かつ実質的な披露宴をおこなうといったブライダルも増えてきているということだ。

街中のレストランの使われ方は、店によっては式から披露宴までというケースもあるが、このところ増えてきているケースは、結婚式のあとの一次会や二次会といった利用形態だ。

式を挙げる場合は神前式にしろ、チャペルにしろ、それなりの装置が不可欠で、設備が整っていないレストランではできない。しかし、最近はチャペルスタイルであれば、簡便な組立式の装置があり、またレンタルサービスもあるほか、教会の牧師も出張してくれるので、ニーズがあればやれないことはない。

問題は店の立地条件、つまり、交通の便に恵まれていることと、店にある程度の空間のゆとりがあるということが大事なポイントになる。

披露宴であれば料理が主体になるので、それなりのものが提供できるかということになる。料理はオーソドックスなものに加えては、バイキング型式や大皿料理といったグループ対応のメニューが多いようだが、余興やパフォーマンスを楽しむニーズも強いので、カラオケやマイク、音響設備の備え付けは不可欠なことといえる。

しかし、いずれにしてもクレバーなカップルの間では、挙式費を節約して披露宴などについては、街中のレストランで済まそうという考え方は年々強まってきているようだ。

式、引き出物などを除けば、この費用は式場やホテルでの三、四割前後で済む。また、さらに進んだカップルの間ではオール会費制での一次会や二次会というケースもあり、営業が低迷するレストランビジネスにおいては、こういったニーズに対応するのも、これからの課題だといえる。

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