低価格時代の外食・飲食店 弁当チェーン、商品開発でしのぎ削る 「本家かまどや」」
花繚乱、市場は過当競争の様相を呈してきている。それにコンビニでの弁当販売が強力な追い打ちをかける。弁当チェーンは同業他社との競合、競争もあるが、むしろ真のライバルは強大な資本力とチェーン網を持つコンビニという見方だ(大手弁当チェーン)。生き残りをかける“サバイバル戦略”には、商品(メニュー)開発能力と出店意欲は不可欠だ。「ほっかほっか亭」と「本家かまどや」は国内一、二位のビッグ弁当チェーン、市場はすでにこの両者が制する様相を呈している。
九六年3月期現在、直営三二二店、FC二〇二〇店の計二三四二店、売上高一一〇〇億円。ほっかほっか亭に次ぐ国内第二位の弁当チェーンだ。
このチェーンのFCシステムは、「センターコアシステム」と称する総本部と事業本部が、同一資本で運営されているところに大きな特色があり、他人資本の地区本部(エリアフランチャイザー)制を採っているほっかほっか亭とは対照的な存在だ。
このシステムは本社が所在する神戸を「全国総事業本部」、市場規模が大きい首都圏に「東京統轄事業本部」(東京・港区)を置き、この二大事業本部を軸に北海道から九州まで全国に四三の地域事業本部を展開する。
ほっかほっか亭同様に、FC出店を量的に推進していくシステムには変わりないが、地域事業本部まで自己資本でのネットワークであるので、地域の市場動向がキメ細かく把握できることや加盟店とのリレーションが緊密に図れるという有利さがある。
地域事業本部は自己資本での展開であるので、投資および運営コストはかかるが、それだけ加盟店の立場に立ったチェーンビジネスを推進しているということだ。
創業は昭和55年11月。一昨年1月の阪神大震災で、壊滅した神戸。新長田での出発。三年後の58年1月には五〇〇店を達成するという驚異的な出店をみせた。
この年の4月には全国に三五の事業本部を布陣し、FC急速展開の基盤を作った。
創業はほっかほっか亭に四年遅れ。そして同弁当チェーンが一〇〇店舗を突破したのが昭和54年12月、いわばほっかほっか亭を露払いにする形で、市場を争奪したという図式だ。
その後、本家かまどやは58年9月一〇〇〇店、二年後の60年2月一五〇〇店、平成元年1月に二〇〇〇店と大躍進を遂げた。
ほっかほっか亭は57年9月に一〇〇〇店舗達成。一五〇〇店突破は58年12月、二〇〇〇店は平成元年12月。出店数でみれば、この両者は昭和50年代終盤になって激しいデッドヒートを展開してきたということになる。
現在のところは六〇〇店近くほっかほっか亭がリードし、同チェーンの独走を許す形になっているが、ほっかほっか亭は59年4月のダイエーとの提携で、企業信用やネットワーク作りの面でパワーアップ、この面でFC展開を有利にしている。
ひるがえって、本家かまどやは資本一体型の地区本部制。いわば“手づくり志向”のFC展開だ。どこの資本とも組みしない“独立独歩”の弁当ビジネスの展開。よく善戦しているということになる。
FC加盟条件は、加盟保証金が一〇〇万円、ロイヤルティーが定額で月間六万円(消費税別)、販促積立金月間五〇〇〇円、清掃積立金(年二回、業者委託による店舗の清掃)同五〇〇〇円、契約期間八年。
店舗開設資金は、自己物件一〇坪の場合で八五〇~一〇〇〇万円。収支は月間売上げ三三〇~四〇〇万円、粗利五〇%はほっかほっか亭同様。月間利益は一七~一九%前後。投資コストが低い割には、ほっかほっか亭に比べ高収益という印象を強くする。
店舗はオフィス街や繁華街など人通りが多ければ、三坪のミニ店舗の出店も可能。
大型店舗では二〇坪クラスで、郊外立地のコンビニや書店など複合タイプの店。飲食業や異業種からの転業FC出店。一オーナーで一四、五店という出店も珍しくない。
メニューは、11月末から全国いっせいに導入を始めた料理の鉄人陣建一氏レシピのえびチリ弁当六八〇円をはじめ、豚キムチ弁当四五〇円、シーフードからあげ丼三六〇円、マーボー丼三九〇円、中華丼四五〇円、牛丼弁当四七〇円など「どんぶり商品」にもこだわっている。
主力メニューは四〇品前後。品数が多いので食材ロスが気になるところだが、これは消費者の好みの幅に立ったメニュー政策ということだ。
本家かまどや。ほっかほっか亭に次ぐ国内第2位のチェーンスケールで、熾烈なデッドヒートを展開している(写真は東京・新橋店)
◇会社概要◇
企業名/(株)本家かまどや▽チェーンブランド/「本家かまどや」▽会社創立/一九七九年(昭和54年)4月▽創業/一九八〇年(昭和55年)11月▽本社所在地/神戸市中央区布引町一‐一‐五(Tel078・251・3734)▽資本金/二〇〇〇万円▽代表取締役社長/金原弘周▽従業員数/二二〇人▽事業内容/弁当チェーン展開、リゾート事業(韓国済州島)▽出店数/直営三二二店、FC二〇二〇店、計二三四二店(九六年3月期)▽売上高/一一〇〇億円(前年比一・八%増)