ピザ生地・焼成の研究 現状のオーブンは限界か

1996.09.09 109号 8面

●多様化への対応

レギュラータイプのピザ生地とクリスピータイプのピザ生地を同じ機器で焼き上げるにはどうしたらよいか。

「焼く」という加熱方法は材料の表面と内部の温度差が大きいことが特徴で、表面が高温で加熱されても中心部の温度は一〇〇度Cをなかなか超えない。ピザ生地のようなでんぷん質の食材を焼く場合には、でんぷんのアルファ化が完全に終わるまで中心部に十分に火を通すことが必要で、表面が焦げ付かない温度でゆっくりと加熱する方法をとらなくてはならない。

ピザを焼くには本来、ピザ専用釜が適している。温度が四〇〇度Cまで上昇できる点と陶器やレンガで作られた釜の外壁が水蒸気を吸収し、ピザ生地の水分をとばしパリッと焼き上げるからだ。また、陶器やレンガは熱伝導率が低く、釜の内部の熱容量が大きいため、火力が少し強くてもゆっくり暖まり、一度暖まったらその温度を保つので火加減が非常に楽なのである。

●難しい風量調整

しかし、デリバリー店やファミリーレストランでは大量に迅速に焼成しなくてはならないということと(焼成時間は大体五分前後に設定されている)、未熟練者が調理に当たるということからコンベアオーブンが導入されている。

従来品のコンベアオーブンには、庫内コンベア部分に強制的に風を送る強制熱風タイプと、空気を循環させない無風タイプがある。

強制熱風タイプでは、庫内の空気が循環するのでコンベアに並べられたピザを均一に焼き上げることができる。しかし、熱風がピザ生地の表面を乾燥させるので、レギュラータイプの生地には向くが、クリスピータイプのように薄い生地には向かない。風量を調整できるタイプの機器は今のところない。

無風タイプでは、特にレギュラータイプのようにピザ生地の厚い場合に、コンベアに並べられたピザの焼き上がりにむらができやすくなる。

●むらなく大量に

どちらのタイプの機器でも、性能面からは三五〇度Cまで加熱することができるが、実際に生地を焦げつかせずに焼成できる温度は二八〇度Cから二九〇度Cで、ピザを焼成する温度としては低すぎる。トッピングのチーズも温度が低いことにより油分の分離が起こりやすくなる。

以上の観点から、ピザの多様化を考慮に入れたコンベアオーブンの開発が必要とされている。

開発の目標は次のようなものである。

●風量の微調整ができ、庫内に適当な風を循環させることができる。

●庫内平均温度を三〇〇度C以上に上げることができる。

●むらのない大量焼成を可能にするコンベア速度を自動的に選択する。

これらの点をクリアする新しいコンベアオーブンが開発された。クロスファン型コンベアオーブンである。今秋発売されるが、既存機種の限界を超える性能がどのように発揮されるか楽しみである。

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