外食コンサルタントに聞く’98外食・飲食業の動向 小熊辰夫氏

1998.01.05 143号 18面

(1)-(1)今後のチェーンストア、明暗を分けるポイントは?

(1)-(2)その理由は?

(2)-(1)今後の単独生業店、明暗を分けるポイントは?

(2)-(2)その理由は?

(3)-(1)今後の有望コンセプトは何か?

(3)-(2)その理由は?

基本とは数値と非数値のバランスに注意を払うことである。

数値では、赤字経営にしないことが必要条件の第一である。赤字では、経営の継続は不可能となることは当然である。その代わり赤字でなければ利益の追求を第一とする必要はない。利益が欲しいということは企業の論理であって、客の意向は全く斟酌(しんしゃく)しない態度といわざるを得ない。

これに対して非数値では、客を喜ばすことを最優先にすべきである。

ところが世間では、この数値と非数値のどちらかに片寄って目的としていることが多い。それがどちらであっても決して好ましいことではない。

しかしむずかしいことに飲食業にあっては、客の満足と店の利益の追求とが両立することは不可能である。これは、今日の小売業では決して考えられないことである。

業界では、マクロの方向性ということがあらゆるポイントに見られるのである。すると、指導者はそのマクロの方向性を敏感に察知し、その方向を目指すことが経営の知恵だと考えている。

しかしこれはおかしい。マクロの方向性というものは、平均的な大衆がこれを目指したから実現したものではない。ミクロの経営は、そのようなことを考えないで、ミクロの自分を決めて進めればよい。ところが、多くのミクロが自分勝手なことをやっても、結果としてマクロという方向性が出てしまうのである。

だから、マクロの方向性を追求することが一番正しいのだ、などと考える必要はない。マクロの方向性は最終的に表れた結果であって、あくまでも計算値である。

あなたの企業は、時にはマクロの方向性と全く反対のことをやってもよい。自分がよいと考えたならば、その方向に進むべきである。

それが、個性のあるミクロの方向性なのである。もちろん、それがとんでもないミクロであってはならない。あくまでも自分なりの理論を考えて、正しいという信念を得たことでなければならない。奇抜なことでは競争には勝てない。

メニューを作るときにはどのようなメニューを作ってもよい。

しかし、それを客に提示した時に、客はいろいろな反応を示す。それは、最初に提示した時だけではない。その後続く経営の経過の中で、客は常に新しい反応を示すのである。

その客の反応を見ながら、メニューの改定を進めるのである。今度はどんな改定をしてもよいということはない。今度はいろいろな理論に従って改める。もしその改め方がうまくいかなかったら、そこで素直に考え直せばよいのである。メニューを改めることに面倒だなどと考えてはいけない。

客の反応はどう知るかといえば、店長の感覚的な判断によるのもよい。さらに、重要な資料は連続ABC分析表である。この表によれば、何をやったらどうなったかということが数値的に分かるのである。

経営の現場の数値でこのようなことができるということは、素晴らしいことである。以前は、その表を作る労力が大変であったが、今日ではそれは簡単にできるのである。私は今から三〇年前の店長時代に、これを活用していた。ところが、今日でも活用している例はほとんどない。

小熊辰夫氏((株)OGMコンサルティング会長、産業能率大学講師、東京文化短期大学名誉教授)大正10年、東京都出身。慶應義塾大学工学部卒、東京大学経済学部卒。東大在学時から明治大学工学部講師を務め、後、富士アイスクリーム店長、工場長を経て、食堂経営コンサルタントとして独立。日本の外食コンサルタントの草分けとして活躍し、国内最大のコンサルタント集団、(株)OGMコンサルタントの土台を築く。

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