‐‐このたびは全国焼肉協会が農林水産大臣の認可を受け「事業協同組合」になられたとのこと、おめでとうございます。焼き肉ブームも年々高まるばかりですね。

江崎　はい。六年前に協会が創立して以来の悲願でしたから政府に認められたのは大変うれしいです。外食業界の景気は決して良くはないですが、焼き肉は上り調子ですね。お値打ち価格の焼き肉チェーンで輸入肉を上手に出し、それなりの味とサービスで対応していることが、焼き肉の人気に拍車をかけているのでしょう。

ただ全般的に客単価が三五〇〇～五〇〇〇円はちょっと苦戦気味かな。私自身としてはお客さんに食後、満足感を与えられるのは四〇〇〇円以上が当たり前だと思うのですが、実際、客単価四二〇〇円の食道園のような高級焼き肉店は厳しいのが現実です。

そこで、“食道園がやってるちょっと安い焼き肉店”として「Ｙａｃｏｏ」（ヤクー）を始めました。客単価はディナーで二九〇〇円。郊外立地でヤングファミリーをターゲットにしています。もくろみ通り業績も上がってますよ。まわりの状況を見ながら、三年後の二〇店舗展開がめど。一方、従来型の出店計画はこの三年間は見合わそうと思っています。

‐‐焼き肉レストラン草分けの食道園です。昭和２１年創業というと焼き肉の変遷を目の当たりにされたと思いますが。

江崎　父が「焼き肉と冷麺」の店ということで始めて、客層を広げようとまず煙の処理を考えたんです。いろいろ研究してましたね。自家製のフードをこしらえたりして。それからメニュー名をわかりやすく韓国名から日本名にもしました。

そんな試みが成功したのか女性や家族客にも客層は広がったわけです。宗右衛門町に出店したのが昭和４３年。３０年から４０年代にかけて焼き肉屋さんがどっと増えて、うちで見習いから育てた料理人たちが引き抜かれて全国に散らばっていきました。バブル期までは客数も増え客単価もどんどん上がりました。

‐‐そうして焼き肉を日本に定着させリーダー的存在の食道園として、今後のたどるべき方向をどうお考えですか。

江崎　「焼き肉と冷麺」の店で出発した食道園、冷麺のおいしさはどこにも負けません。その原点に立ち戻り「焼き肉料理の仕上げは冷麺で」ということをもっと普及させたいですね。

新しいメニュー開発では野菜は見逃せません。これからは、焼き肉料理イコール野菜料理といえるくらい肉と野菜との組み合わせが主流になると思う。食卓にのせる生野菜メニューは韓国の方が進んでいるので、いろいろアイデアは浮かぶんですよ。中国野菜も合いますしね。

食道園で今人気なのは、「つつみ野菜のかご盛り」。チシャ菜、エンダイブ、ゴマの葉、チコリのほかニンジンやキュウリなどに味噌をそえてかごに盛り、そば粉でできたクレープに肉と包んで食べるメニューなんです。

また客単価を上げるため接待客をふやす方法として、料亭のしゃぶしゃぶに負けないしゃぶしゃぶを提供しています。このメニューを取り入れることで、客層も広がることを期待しています。

焼き肉店の場合、おいしいものを出していればそれでいいと考えられがちですが、器、盛りつけ、提供の仕方、出すタイミングなど接客サービスについてもきちんと考えてゆくべきですね。

‐‐従業員の教育はどのようにされていますか。

江崎　ホールに関しては週に一回研修会を行っています。教えるのは各店の店長と副店長、教えることこれもまた勉強ですからね。料理人の養成に関しては、日本には調理師組合もないのでそれぞれの店で各自養成しなくてはなりません。これは焼肉協会の今後の課題でもあります。

これから全国焼肉協会として、焼き肉業界の問題点を順番に解決できるよう努力してゆくつもりです。

‐‐ご発展を期待しております。今日はどうもありがとうございました。

◆（株）食道園／代表取締役江崎政雄／所在地=大阪市中央区宗右衛門町五‐一三、Ｔｅｌ０６・２１２・１７５１／設立=昭和２７年／資本金=一億二七七七万円／従業員=二一〇人／年商=四二億円／店舗数=一七店

昭和２１年、現社長の父親が「日本初」と自負する焼き肉店を創業。無煙ロースターなどない時代だったが煙の処理を研究し、フードなど自前の換気設備を行った。昭和４３年に宗右衛門町に移転、延べ八〇〇坪のビルすべてを店舗とし世間を驚かせた。

焼き肉レストラン文化の発祥地とされ、文化人やプロスポーツの選手からも一目置かれている食道園。ここから多くの料理人が全国に巣立ったといわれる。

時代の流れに対応し客単価三〇〇〇円の「Ｙａｃｏｏ」（ヤクー）を実験店として４月に開店。当面はこのタイプに力を入れ三年後に売上げ五〇億円をめざす。