百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ザクロ

2002.05.10 81号 11面

ザクロとイチジクは、ともに古い歴史を誇る果物である。原産地は中近東とみられ、日本に伝えられたのは江戸時代。中国では薬食として貴重視され大活躍している。日本では利用面で劣るのは残念である。

(食品評論家・太木光一)

ザクロの原産地はペルシャともアフガニスタンともいわれている。栽培の歴史は古く紀元前四〇〇〇年ごろとみられ、エデンの園のリンゴは、実はザクロであったという説もある。

紀元前六~七世紀に北アフリカの大国カルタゴがヨーロッパに導入したことから「アップル・オブ・カルタゴ(カルタゴの果物)」とも呼ばれた。

ザクロはザクロ科の落葉高木で七~八メートルの高さまで成長する。漢字で書くと「石榴」とか「柘榴」と書かれるが、榴とは粒の意で、粒からなる果物を意味する。花は八重咲き、半八重咲き、一重咲きなどがあるが、八重咲きは果実をつけない。果皮は厚く、果肉は作らず、内部に六子室があり薄い隔壁で区分され、多数の種子がこれに沿って配列し、種子の外回りにある外種皮は多汁で甘酸味があり生食される。

世界的な産地はイラン・モロッコ・インドなどで、イランでは天から与えられた貴重な果物としている。この地方の食べ方は皮を破らないように押しつぶし中身が果汁いっぱいになったら小さな穴をあけて飲んでいる。米国でもザクロ栽培は盛んで、絞ってグレナデンシロップを作り、カクテルやシャーベットなどに愛用している。中近東では果汁を煮詰め肉料理に使用。美味なシチュー料理「イマム・バイジル」は有名である。

中国では、ザクロを薬膳料理に採用している。石榴子糖奬(ジュース)や石榴皮密膏(ジャム)などにされている。民間の薬用では酸味ザクロの樹皮にはペレチェリンと呼ぶアルカロイドが含まれ、真田虫(條虫)の駆虫薬に使用。また乾燥果肉は下痢止めに利用されている。

中薬辞典によると、ザクロは皮(実)・葉・花・根のすべてが薬材として利用され貴重な果樹とみている。果皮が主要なもので、秋季に入って熟果をとり、種子部を除去しよく乾燥し、場合によっては薫蒸する。厚さは二~三ミリ程度である。なるべく果皮の厚いものが良品という。根は駆虫・抗菌・抗病毒、花は治吐血・生理不順に良い。

効用主治は極めて広く、まさに庶民の薬剤と呼べるもので、便秘・止血・駆虫・治急性下痢・血便・脱肛・帯下・腹痛・疥癬などに効果が期待される。用法は煎湯がよく、四~六グラムを一回分として内服がすすめられる。

中国では薬剤として貴重であるが、国産は効用が低く、食用としても利用価値は低い。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら