外食史に残したいロングセラー探訪(97)元祖串かつ だるま「串カツ」

2015.07.06 436号 10面
人気メニューはダントツで「元祖串かつ」。次に「豚かつ」「天然エビ」と続く

人気メニューはダントツで「元祖串かつ」。次に「豚かつ」「天然エビ」と続く

 ◆衣・ソース・油の三位一体 「ソースの二度付け禁止やで」 今や観光スポット

 今や大阪グルメの定番中の定番「串カツ」。地元の人のみならず、観光客にも大人気料理だ。串カツ専門店は、その人気ぶりを示すかのように、約15年前に比べ、大阪はもちろん、全国的にも店舗が増えている。その串カツ専門店の元祖といわれているのが、浪速区の繁華街・新世界にある「串かつ だるま」。85年以上も続く老舗であり、客が絶えない繁盛店だ。だが、一時は閉店の危機があった。

 ●商品の発祥:大阪の味を守りたい

 串カツは、1929年、創業者である百野ヨシエさんが、肉体労働者向けの安価な食べ物として考案した。現在「新世界総本店」にあたる場所で始め、3代目までは1店舗のみだった。転機は、3代目大将が体調を崩し閉店の危機に追い込まれたときに訪れた。

 同店の常連で、子どものころから通っていたというタレントの赤井英和さんは、閉店の危機を知ると「大阪の味をなくしたらアカン」と、立ち上がる。浪速高校ボクシング部の1年後輩だった、現会長の上山勝也さんに声をかけ、当時会社員だった上山さんが継ぐことになる。

 ●商品の特徴:かたくなに守る味

 味を受け継いでいくために「絶対にいじくったらアカンところ」と、一切の妥協をしないのが、衣、ソース、油だ。衣は、各店で粉と水を溶いたものに、特注の非常に細かいパン粉を使う。ソースは、3人しか知らない秘伝のレシピ。サラッとした濃い褐色で、甘味と酸味が程よくある。油は、ヘッド(牛脂)100%で、これも特注品。がんこに味を守る。

 客席には、ステンレスの容器に入ったソースが用意され、共有で使うため「ソースの二度付け禁止」。キャベツは無料。一度付けたソースが足りない場合は、キャベツで付けるのが裏技だ。

 ●販売実績:年間約170万人

 14年前は、3坪・12席のみだった同店。上山さんが4代目を継いで会社化し、今では、国内に13店舗、年間約170万人が訪れる人気店だ。理由をたずねると、「精神はどっぷり店に入れるけど、運営に関しては距離を置き、客観的に見て判断しているから」という。

 さらに、客にも従業員にも喜んでもらう、面白がってもらうことを大切にしている。串カツを持った「だるま大臣」人形を店頭に置くのも「おもろいから」でスタートした。「おいしいもんとお笑いが融合したエンターテインメント。お客さんに喜んでもらえたら、僕たちもうれしい」。同店の強さは、社員の定着率90%という数字にも表れている。

 ●企業データ

 社名=一門会/店舗名=大阪新世界元祖串かつ だるま/本店所在地=大阪市浪速区恵美須東2-3-9/店舗数=国内13店(大阪12店、姫路1店)、海外3店/事業内容=飲食店経営。店頭の「だるま大臣」人形は、2007年から始まった。大阪梅田にあるファッションビル「ルクア大阪店」を除く、全店に置いてある。全店中、売上げが最も高いのは、道頓堀店と心斎橋店。

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