メニュートレンド:“辛い”に特化して話題に 赤い壺「やみつき麻婆豆腐セット」
世の中、飲食店は星の数ほどある。ましてや都内、山手線の内側ともなれば、さまざまな業態の飲食店がひしめき合っている。そんな激戦区でコンスタントに利益を上げていくには、他店との差別化がマスト。東京メトロ・表参道駅近くにある「赤い壺」は、“辛い”に特化したことで、常連客をつかんでいる店だ。
●ランチタイムは9割が女性客 週2回限定のランチが評判に
「赤い壺」の人気メニューのひとつが、ランチとして提供されている「やみつき麻婆豆腐セット」。麻婆豆腐、小鉢、スープ、ライスのセットで、ライスとスープは1回ずつ、お代わりができるというもの。
このメニューのベースとなるスープは、4日間かけて仕込む。まず鶏肉、豚肉、白菜、ニンジン、大根、その他の野菜などを、丁寧にあくをとりながら3日間煮込んで、辛くないスープを作る。これにサンショウ、陳皮、八角をはじめとする7種類の漢方と、9種類の唐辛子、昆布(うま味のある唐辛子がない時期に使用)を加えて、さらに1日煮込んで辛味のあるスープを作る。それとは別に、国内外の唐辛子から、乾燥ものと生のものをさまざま取り混ぜた唐辛子たっぷりの激辛スープを仕込む。
「やみつき麻婆豆腐セット」の辛さは、「ピリ辛」「じんわり辛」「旨辛」「激辛」「鬼辛」の5段階から選択できるようになっているが、この3種類のスープをブレンドすることで辛さを調整している。
「赤い壺」は、“辛い”をキーワードにしているだけあって、唐辛子には徹底的にこだわる。「唐辛子農家や唐辛子の専門家にいろいろお話を伺って、勉強しましたね。唐辛子にも旬があるので、そのときどきの旬のものを取り入れるようにしています」と伊藤友美店主。
もちろん“辛い”だけでは人気店にはならない。“うまい”がプラスされて、“うま辛”になってこそ、常連客をつかむことができる。「赤い壺」では、唐辛子にこだわる以外にも、麻婆豆腐に使用する豚ひき肉に“企業秘密”のうま辛の下味を付けたり、麻婆豆腐をミニサイズの土鍋に盛り、直火にかけて、アツアツ&グツグツ状態で提供するなど“うまい”にも手を抜かない。
さらに、「やみつき麻婆豆腐セット」が人気メニューとなる、とっておきの仕掛けがある。「赤い壺」がランチを提供しているのは、火・水の2日間だけ。毎日ではないことが、かえって集客力を高めているという。ランチ客のうち9割が女性で、そのうち半数以上が常連客だが、唐辛子の辛味成分には代謝をよくする、脂肪の分解を促すなど女性にはうれしい効能がある。「火曜と水曜のランチは、辛いものを食べてカラダの中からキレイになる」をルーティン化している女性客が多いということだろう。
おかげで週2回のランチタイムは常に満席状態。「週2回だけ」という限定価値が、客の心理をあおり、店に足を向けさせるというわけだ。「毎日、ランチをして客足はそこそこより、週2回だけど満席の方が売上げの効率がいいですね」と伊藤さん。
辛さに特化したメニューコンセプトと週2回の限定価値で「やみつき麻婆豆腐セット」は、メニュー名の通り“やみつき”になる客を増やしている。
●店舗情報
「赤い壺」 所在地=東京都港区北青山3-5-9 レイカーズ青山B1/開業=2012年12月/営業時間=正午~午後3時(火・水限定)、5時~翌午前0時 日曜定休/坪数・席数=14坪・24席/1日平均客数=昼20~30人 夜20~30人/平均客単価=昼1000円 夜5000円
●愛用資材・食材
「片岡のきぬ」 ミツワ食品(群馬県前橋市)
程よい軟らかさ
「赤い壺」では麻婆豆腐のほかにもスンドゥブチゲを提供しているが、どちらもこの豆腐を使用している。「絹ごしの中でも、これは若干軟らかめで食感がいいんです。スープとよくなじんで、スープの邪魔をしない点も気に入っています。価格も手頃でコストパフォーマンスがいいことも、食材として優秀ですね」と伊藤さん。
規格=300g