伊藤忠食品、植物由来食品を強化 SMに専用売場提案

卸・商社 ニュース 2020.01.13 11996号 01面
伊藤忠食品が市場へ提案するプラントベース食品の商品群

伊藤忠食品が市場へ提案するプラントベース食品の商品群

伊藤忠食品はヘルス&ビューティー(H&B)分野の新たなMDとして、プラントベースフード(植物由来食品)の提案を強化する。健康志向や環境保護意識の高まりでベジミートなど代替食が世界的に注目を集めており、わが国でも今年の東京2020大会開催によって、植物由来食品の認知度が一気に高まるとみるためだ。卸ならではの商品調達力や売場提案機能を通じ、国内メーカーの簡便タイプの植物肉や主食系商品を揃えた専用コーナーをSM(食品スーパー)に提案していく。小売市場におけるニーズ拡大も見込み、春夏シーズンの棚替えへ向けてSM30企業に専用売場の開設を目指す。(篠田博一)

同社・長田恵里奈商品本部MD統括部地域産品・ヘルス&ビューティMDチーム主任は植物由来食品に取り組む狙いを「オリンピックイヤーでもある今年のH&B分野で何に注力すべきかと考えれば、間違いなくSDGsや環境問題、人生100年時代といわれる健康意識の高まりに対応したもの。そのヒントになるのが、プラントベース」と強調する。

国内市場では海外のようなビーガン(絶対菜食主義者)やベジタリアン対応として進めるのでなく、植物由来の健康性を生かし、メタボやダイエットを意識する中高年・女性層、タンパク質は取りたいが肉を量的に食べづらい高齢者、野菜が苦手な子どもでも食べやすい商品として幅広く提案したい考えだ。「従来の肉や魚の代わりに、週1~2回プラントベース食品が食卓に上がるような習慣作り」(長田主任)をイメージに取り組む考えだ。

昨年から大豆ミートなどの認知度が上がってきたこともあり、すでに一部の小売業が売場に品揃えする動きも登場。国内市場は近く300億円規模へ到達するポテンシャルがあるともみられている。

伊藤忠食品ではそうしたトレンドをとらえ、卸の機能を生かして国内メーカーや輸入商社の販売する多様な植物由来製品約50アイテムを調達するとともに、得意先のニーズに合わせて「フェイクミート」などのPOPで訴求する専用棚の開設提案を本格的に進めていく。

同社が扱う主な推奨商品として、三育フーズの「大豆ローフ」(大豆原料をミートローフ風に加工したハムタイプ製品)、日仏貿易「カルロタ 有機ベジハンバーグ マッシュルーム」(オーガニック小麦を原料にしたそのまま食べられるハンバーグ)、くらこん「Good for Vegans ふわふわつくね」(豆腐を加えるだけで本物そっくりの味のつくねが作れる)などがある。

これらメーカーの商品の中には病院食や業務用など一部ルートのみで展開していたものもあるが、伊藤忠食品の仕掛けによって一般小売市場へも販路を拡大することになる。また植物肉以外にもビーガン仕様のリゾットや即席麺、蒸しパンなどの主食系商品も併せた棚提案を行い、総合的なプラントベース食の活性化を図っていく考えだ。

22~23日、同社がポートメッセなごや(名古屋市)で開催する「東海営業本部展示会 FOOD WAVE 2020 NAGOYA」では、プラントベース食品の提案を初披露。植物肉バーガーやプラントベースアイテム紹介のほか、大豆、小麦、キノコなどさまざまな素材から作られたベジミートの食べ比べコーナーなどを用意。小売業にプラントベース食の味や商品価値を実際に体験してもらい、新たな売場・市場の創出へ役立てたい考え。

◆解説:プラントベース食元年となるか–

植物由来の代替肉製品は、昨年に米国のビヨンド・バーガーなどが世界的に大きな話題を呼んだ。日本ではビーガンなどの人口が少なく、現状ではまだ大きなムーブメントにはなっていない。

しかし、代替肉は低カロリー・低糖質、タンパク質や食物繊維が豊富で健康志向の高まりに対応すること、わが国でもSDGs(持続可能な開発目標)の浸透でプラ製ストローやレジ袋の削減など環境問題への対応が業界規模で進んでいることを背景に、牛などの家畜に比べ環境負荷を低減しつつ生産できる植物肉に注目が集まる可能性は強い。

特に今年は日本で東京2020大会が開催され、海外から訪れるビーガンやベジタリアン向けに多くのホテルや飲食店、食品メーカーなどが対応を進めることから、植物由来食品の認知度が一気に高まるとみられている。将来的な環境保護や食糧問題も視野に入れ、2020年はプラントベース食品元年となるか。注目されるところだ。

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