日本水産、サバ陸上養殖を開始 23年の事業化視野
日本水産(ニッスイ)とグループ養殖企業、弓ヶ浜水産(鳥取県境港市)は5月下旬から、マサバの陸上養殖実証試験に着手する。両社に加え、水処理技術を提供する日立造船の3者による共同開発。外海の海水を使用しないことで、アニサキスなどの寄生虫や魚病などのリスクを低減させ、台風など自然環境に左右されないサバの安定供給を目指す。23年4月の事業化を視野に、安全性や品質面で付加価値の高いサバの販売を目指す。
弓ヶ浜水産の「米子陸上養殖センター」(鳥取県米子市)が1日竣工し、実証試験の準備が整った。国内初となる大規模なマサバの循環式陸上養殖施設。3者による共同開発は昨年2月に合意しており、同センターはその拠点となる。海水に近い塩分を含む地下水の利用と、日立造船の水処理技術を活用した循環水処理システムにより、水温・水質をコントロールしてマサバの生育に最適な環境を保つことが可能という。
この施設で確立を目指す技術的な課題として、(1)日立造船の流体シミュレーション技術(水槽内の水流をコンピューター上で再現)を活用し、飼育水中の固形物除去を効率化する(2)養殖魚から排出される排泄物などが含む硝化処理の効率化(浮遊性ろ材を活用した処理システム)(3)ランニングコスト低減のための省エネ化システム(4)生産技術、養殖管理技術の確立と生産性の向上–を挙げている。
弓ヶ浜水産は「共同開発を通して、システム全体のパッケージ化によって競争力のある陸上養殖システムを構築し、国内での循環式陸上養殖の産業化を目指す。持続可能な水産物の安定的供給への寄与を狙う」としている。(本宮康博)