見直される食品備蓄 ローリングストック推奨 災害・非常時に「食べながら備える」

ニュース 総合 2020.07.27 12087号 01面
3日分の食事がセットされたアサヒグループ食品の「ローリングストックBOX」

3日分の食事がセットされたアサヒグループ食品の「ローリングストックBOX」

 相次ぐ自然災害への備えとして、家庭での食品備蓄が見直されている。特に備蓄した食品を定期的に消費し、食べた分だけ買い足していく「ローリングストック」を推奨する動きが活発化。行政は積極的に情報を発信し、企業も自社商品を有効に活用する方法を提案する。非常時には地域のライフラインが絶たれ、食料の確保や調理が困難になる可能性があることから、新しい備蓄のあり方として注目が集まる。店頭でも時流に沿った販促テーマの一つになりそうだ。(涌井実)

 全国各地で大規模災害が頻発する中、日常生活の中に備蓄を取り込むローリングストックの考え方が広がっている。食品や衛生用品など普段使いの日用品を多めに買い、使った分だけ買い足して在庫を回転させる循環備蓄法だ。食品の場合は非常食ではなく、日常的に食べている加工食品や飲料を使用するのがポイント。「食べながら備える」ことで、賞味期限切れのリスクを減らせるメリットがある。

 農林水産省は昨年3月「災害時に備えた食品ストックガイド」を公開。備蓄に適した食品の選び方やローリングストックの活用術、災害時に役立つレシピなど実践的な内容を取りまとめた。

 小売業では、イオンやイトーヨーカドーが防災時の備えとして、Webで食品備蓄の重要性を解説。「無印良品」を展開する良品計画もローリングストックを勧める。

 食品メーカーもローリングストックの重要性を訴求する。

 味の素社はおかゆ商品「味の素KKおかゆ」シリーズのブランドサイトでローリングストック法を紹介。キリンホールディングスやサントリーホールディングスはミネラルウオーターの定期的な備蓄を推奨する。

 アサヒグループ食品のフリーズドライ商品を詰め合わせた「食べながら備えるローリングストックBOX」は、新型コロナウイルス感染拡大の“非常時”に需要が急増。3月の販売数は前年比7倍、3~6月の累計売上げも前年比3.8倍と大幅に伸長した。

 日清食品グループは即席麺やシリアル、カップライスなどを組み合わせた1日3食3日分の食事例を提示。

 マルハニチロは缶詰、瓶詰、レトルト食品を活用し、災害時に日常に近い食生活を送るためのノウハウを紹介する動画を公開している。

 また、ハウス食品は「温めずにおいしいカレー」、江崎グリコは常温で6ヵ月保存できる「アイクレオ赤ちゃんミルク」、森永製菓は袋の中で調理できる「もみもみホットケーキミックス」をローリングストックに組み込む食品として紹介。キッコーマンやマルコメ、新進などは、家庭用備蓄推進活動「デイリーストックアクション」にサポーター企業として参加する。

 ローリングストックに対応できる食品は幅広く、すでに多くのメーカーがWebなどで情報を発信している。

 新型コロナの第2波や自然災害への備えの面から消費者の関心が高く、新たな販促テーマとしても期待される。

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