地域ルポ 新宿駅南口(東京・新宿区) 明年大型商業ビルが完成
JR新宿駅南口。このエリアは西口や東口ほどの賑わいはないが、しかし、小田急ルミネ前の南口交差点周辺にはマクドナルド、ファースト・キッチン、ドトールコーヒー、プロント、ルノアールといった大手外食チェーンが進出しており、独自の飲食ゾーンを形成している。このエリアは西口商業ゾーンの南側、すなわち、ヨドバシカメラから甲州街道寄りのエリアと接するほか、南は交差点から代々木方向の通り沿い、また東はJRの線路を大きくまたいで新南口は新宿三丁目方面のエリアにおよぶ。一面での規模の拡がりはないが、それぞれに独立した商業ゾーンを形成する。
こういった立地特性にあって、今後大きく発展が期待されているエリアは、南口交差点から代々木方向の通り沿い、また、駅新南口から南側線路沿いの千駄ヶ谷(五丁目)地区だ。理由は前者のエリアでは平成9年4月開業予定の営団地下鉄一二号線のホームが、また、JR東日本の本社ビル(地上二八階、地下四階)や小田急ホテル(地上三六階、地下四階)、新宿マインズタワー(地上三四階、地下三階)などの超高層ビルが建設(新宿マインズタワーは今年10月完工)、後者のエリアにおいてはデパート(高島屋)や専門店が入居する商業ビル(地上一四階)の建設が進んでいるからで、これらの大型プロジェクトに触発されて、地域が一段と活性化することが予想される。
新宿は日本一のマンモス駅で、一日当たりの乗降者数は二六〇万人以上にもおよぶ。
新宿は歌舞伎町という日本有数の盛り場、また、日本最大の超高層ビル街、さらにはヨドバシカメラに代表されるディスカウンターの集積が多くあり、通勤やレジャー、ショッピング客など来街者がひきも切らない。
これら人の流れが最も多いエリアは西口で全体の二三%、次いで南口が一八%、東口が一四%という順で、単純に計算すれば南口エリアには、一日平均約三〇万人の人の流れがあるということになる。
新宿駅にはこれら三ヵ所を含め計九ヵ所の改札口があり、人の流れは四方におよぶ。南口エリアはメーンの改札口のほか、東南口、新南口、小田急乗り換え南口と三つの改札口を数える。
南口の改札口を出れば、正面は甲州街道が東西を貫く。新宿にはJR(中央線、山手線、総武線、埼京線)に加え、小田急、京王の私鉄二線が乗り入れる一大ターミナルでもあるが、南口前面の甲州街道はこれを大きくまたぐ。
街道に出て周辺を見渡すと、新南口に隣接して線路に沿う形で大型のビルが建設中だ。
地上一四階、地下四階の商業ビルで、完成は平成8年11月、ここに一括賃貸で高島屋と専門店が入居する。事業主体はレールシティ東開発(本社・東京)。
甲州街道を西へ二〇〇mほど歩くと小田急ルミネ前の南口(西新宿一丁目)交差点だ。
この交差点を前進すれば、初台方面へ。ルミネ前を通って北方向に行けば、JRおよび小田急、京王各線の西口ターミナルだ。
交差点を左析して南方向に歩けば、一二、三分で代々木に着く。新宿と代々木は近い。直線距離にして、五〇〇mほどといったところだ。
このエリアにはホテルサンルートやJR総合病院などの大型の都市施設が展開するので、比較的人通りは多い。
ルミネ前交差点西側の角地。ハンバーガーの「ファースト・キッチン」が出店している。開店して一六年になる。
この店のロケーションは交差点の角地という条件に加えて、西側にヨドバシカメラはじめ、さくらや、ドイカメラ、ソフマップなどのカメラ、家電、コンピューター分野のディスカウンターが展開しており、ショッピング客や駅からの来街者がここを回遊していく通過点になっている。
ディスカウンターだけではなく、このエリアにはパチンコパーラー、ゲームセンターなどのレジャー系店舗と軒を連ねて、居酒屋、喫茶、ラーメン店など飲食店も多く存在する。
ファースト・キッチンの客層は一〇代、二〇代のヤング層が主軸で、とくに土・日には学生層やカップルの来店が多くなる。
人気メニューはベッグエッグバーガー、ビーフステーキサンド各二九〇円、ヒレカツサンド三〇〇円、フライドチキン(一本一八〇円)など。
客単価五三〇円。場所柄イートイン八割のウエートで、持ち帰りは少ない。
営業時間は月~土が午前6時から翌朝2時まで、日曜日は周辺の会社が休みになるので、夜は10時30分までと平日に比べ早い。
交差点の南側、甲州街道沿い、京王線入口近くのビル一階にドトールコーヒーが出店(FC店)している。新宿に一二店あるうちの一店で、昭和51年7月のオープンだ。店舗面積三五坪、客席八〇席。
店舗周辺のオフィスワーカーのコーヒー需要を狙っての出店で、平日の利用は多い。しかし、日曜日は会社が休みになることと、立地的には西側の商業ゾーンと大きく離れることになるので、平日の三、四割減の客足となる。
このため、営業時間も平日が午前7時30分~午後10時30分、日曜日が午前9時~午後7時と他のドトールコーヒーに比べ相対的に短い。月商七〇〇~八〇〇万円、もう少し客数を伸ばして売上げを確保したいところだ。
交差点から代々木方向に歩く。都道四一四号線、通称“サンルート通り”片道二車線道路で両側にオフィスビルや雑居ビルが建ち並ぶが、ここ数年来飲食店舗が増えてきている傾向にある。
マクドナルドもその一つ。葵通りと接する角地。ビル一~三階での出店で、二年前(平成5年3月)にオープン。店舗面積七四坪、客席数計一七四席。現下の立地環境からみれば、マックにしては地味な出店という印象を受けるが、これは地下鉄の開通やJR東日本本社ビル建設などによる地域活性化をあて込んでの先取り出店のようだ。
営業時間は午前7時から午後11時。現在、ベーコンマックバーガー二九〇円を一四五円(一四%引き)でキャンペーンセール中。
マックの手前、同じ葵通りの角地にプロントが展開している。マックより一ヵ月遅れの平成5年4月開業で、それまで個人経営の喫茶店だった。プロントのFCに加盟しの再スタートで、集客力は大幅に高まっている。
店舗面積二〇坪、客席はプロントは昼・夜の“二毛作経営”であるので、昼の二九席から夜は三九席のキャパにる。
営業は午前7時30分から午後5時30分までが「コーヒータイム」、5時30分から11時までが「バータイム」。ストア・ブランドが大きく浸透しているので、店舗周辺のサラリーマンに広く支持され、月商約一〇〇〇万円と好成績を収めている。
道路を隔ててマクドナルドの前、ビル一、二階に「一五〇円コーヒー」を看板にするカフェ「VELOCE」(ベローチェ)が出店している。
コーヒーチェーン「シャノアール」(本社=東京・板橋)の直営店で、今年7月にオープンしたばかりの新装店だ。
やはり、地域の活性化をみての先行出店で、これからの集客力に大きく期待を寄せているということだ。
店舗面積計六〇坪、客席は一階五〇席、二階一一〇席。メニューはブレンド、アメリカン、アイス、レモン、ミルクティーなど各一五〇円。
ドトールコーヒーやプロントよりさらに低価格志向のコーヒーで、同業態での厳しい価格競争が読み取れる。
ジャーマンソーセージ、ツナサンド、タマゴサンド各一八〇円、ハムサンド二三〇円などフードメニューも提供している。客単価三〇〇円。営業時間午前7時~午後11時、無休。
ベローチェの並びに老舗格の喫茶チェーン「ルノアール」が二店出店している。狭いエリアにFFや喫茶チェーンが集中展開するという図式だが、それだけ今後において集客が見込めるということだ。
ルノアールは第一(七七坪、一〇五席)、第二(三六坪、四五席)の二店舗で、オープンが一五~一七年前。
コーヒー一杯四五〇円だが、ゆとりの空間と質の高いサービスが売りものだ。