インドで牛乳価格高騰続く 一般家庭家計へ影響大
世界最大の牛乳生産を誇るインドで、牛乳の価格高騰が企業経営や家計を直撃している。昨年1年間で4回の値上げを実施したメーカーもあり、一部では庶民の手が届きにくくなる事態となっている。一方、政府は近隣国への輸出を拡大するため、牛乳の生産量を向こう5年間で2倍にする計画を打ち出している。政府や政府系協同組合などは潤うものの、国内向けメーカーや消費者は価格高騰の影響を直接に受けることになる。ロシアによるウクライナ侵攻などを契機に、コストの増大は深刻な状況となっている。
インドの乳製品大手マザー・デアリーは昨年11月、年初以来4回目となる牛乳の値上げを実施した。脂肪分6%以上の全乳は、1L当たり1ルピー(約1.6円)引き上げられ64ルピーとなった。量り売りの脂肪分が少ないものについては1L当たり2ルピーが引き上げられ、家計に打撃を与えている。西部グジャラート州の協同組合連盟が展開する「アムル」ブランドの牛乳も昨年値上げしている。
値上げの原因はウクライナ侵攻に端を発したエネルギー価格の上昇と、それに伴う乳牛の飼料代や容器代などの高騰だ。これにより庶民の間では購入する牛乳の質を落としたり、量を減らしたりするケースが相次いでいる。育ち盛りの子どもを持つ一般家庭への影響が如実に表れている。
一方、政府は世界的な需要は拡大していることから生産量を増やし、2025年には現在の約1億tから2億tへ倍増させる計画を立てる。そのための協同組合の再編も進めている。グジャラート牛乳販売協同組合連盟を中核に他の五つの協同組合と合併をさせる。バングラデシュやネパール、ブータンといった近隣の南アジア諸国に輸出する計画だ。
インドの牛乳生産は年々拡大している。国連の食糧農業機関統計によると、2000年に約3300万tだった生産量は増産の一途で、20年に初めて1億tを超えた。21年は1億0800万tとなっている。世界ランキングの生産量首位だ。
21年の市場占有率は14.55%。2位米国との差は1%もないが、この2ヵ国で世界の4分の1以上の生産量を誇っている。今年中にも人口で世界首位に立つことが有力視されているインドの主力産業に育てていきたい意向だ。(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)