食品経営者フォーラム、櫻庭英悦氏が講演 テーマは24年食品産業の展望
◇高崎健康福祉大学 特命学長補佐 客員教授櫻庭英悦氏
日本食糧新聞社主催の食品経営者フォーラムが1月23日に開催され、高崎健康福祉大学・特命学長補佐・客員教授の櫻庭英悦氏(食品産業功労賞選考委員長)が、「2024年食品産業の展望 ~激動を生き抜くシナリオ」をテーマに講演した。
1月1日に発生した能登半島地震に触れた櫻庭氏は、内閣府参与・農林水産省顧問を拝命して復興に向けて活動していることを報告し、これまでの多大な支援に対して謝意を示すとともに参集した食品界の幹部に向けてさらなる食料支援などの協力を仰いだ。能登への主要道路が1本で、周辺の道路の復旧が遅れていることから、支援物資の配送に支障を来し、復旧が困難な状況にあることを説明した。支援物資として寒い時期ということもあり、おにぎりではなく惣菜パン、アルファ化米、液体ミルク、カップ麺やカップ味噌汁など温かくすぐに食べられる食品、多様な缶詰・レトルト食品、介護食品、機能性飲料や野菜ジュース・栄養補助食品などを手当てした。
食料・農業・農村基本法の改正が今年予定されているが、基本法見直しの方向性として(1)食料を届ける力の強化(2)次世代へつなぐ環境にやさしい農業・食料産業への転換(3)新たな技術を活用した生産性の高い農業経営(4)農村・農業に関わる人を増やし、農村や農業のインフラを維持–を目的としたものになると解説した。
食品産業を取り巻く今年大きくなりそうな課題として(1)2024年物流問題(2)カーボンプライシング(3)プラスチック問題(4)欧州の動き–を挙げた。(1)2024年物流問題については、慢性的なドライバー不足に加えてECなどがあり配送量の増加により、輸送能力が低下してものが運べない状況にある。さらに今年4月から時間外労働時間規制がかかり、燃費高騰、二酸化炭素(CO2)削減など物流業界は複合的な問題を抱えている(2)カーボンプライシングについては、企業が排出するCO2に価格を設定してCO2排出に金銭的な負担を課し、排出者が地球温暖化の主要因CO2排出量の削減を目指すもの。具体例としては炭素税、排出量取引などが行われている。国際エネルギー機関(IEA)が算出する炭素価格は25年にガソリン1L当たり24.76円で、40年には55.02円としている。
ちなみに28年にGX法が施行される日本では同7.86円と国際的に大きく乖離している(3)プラスチック問題については、20年7月からのレジ袋有料化により省プラスチック、脱プラスチックに向けて動き出したが、バイオマス25%入りプラスチックでは生分解せず、CO2を25%削減しただけでプラスチックの使用量は大きく減少していない。
また、プラスチックを他素材への切り替えについて、例えば紙では、1t作るのに立木20本が必要になってくる。ストローやフォークなどを紙製にして、原料として世界の森林資源を使用している行為は、後戻りできない破壊行為になっている(4)欧州の動きについては、英国ではプラスチック包装税としてリサイクルしない製品については1t当たり約3万6600円の包装税を徴収している。輸入業者にもかかる。フランスでは廃棄物防止法として野菜や果物をラッピングしている小売店に対して大手中小関係なく1日当たり約20万円の罰金を科している–とした。(宇津木宏昌)