百歳への招待「長寿の源」食材を追う「トシシ」
トシシはあまり日本では知られていないが、中国では防老・抗老の薬材として極めて人気が高い。中国にみる高齢化社会への進行は極めて早く(日本でも全く同じ)、この効用が高く評価されてきたのである。
主産地は中国の遼寧・吉林・河北・河南・山東・江蘇などの各省で、やや北部の地域に多くみられる。成分にはビタミンA・ベータカロチン・トラキサンチン・ルチンほかが多く含まれ、優れた薬材と呼べよう。特に心臓と血圧の降下作用が大きいといわれる。
中薬大辞典によれば、補肝腎・益精髄・治腰膝の酸痛・遺精・視力減退などをはじめ便秘にも効果が期待できるとされている。
『枹朴子』によれば、不老不死の仙薬で、「巧みに用いれば長命百歳を超え、仙人になることができる」と称賛を惜しまない。また名医別録は「肌を養い、陰を強くし筋骨を堅くし、茎中が寒にして精の自ら出るのを治し、久しく服すれば、目を明らかにし、身を軽くし天年を延べる」と記している。
トシシはヒルガオ科ネナシカズラの種子で、7~8月に成熟し、長径で一・五、短径で一・〇ミリと小さい。種は堅硬で破砕しにくい。利用法は広く、薬粥・薬酒・薬茶・薬膳などに利用される。この卓効で知られ消費が拡大している。
薬粥を作るにはトシシ(乾燥品であれば三〇~六〇グラム、新鮮品で六〇~一〇〇グラム)、コメ八〇グラム、白糖適量を用意。コメを入れ粥を作り白糖を加える。一日朝晩二回、薬効を期すにはある程度の長期間食用することが望ましい。男性には補益強精、養生延年の効果が期待されよう。女性には顔色良好、頭痛や耳鳴りに効果大。中年男女の体力増強にもよいという。
トシシ酒も手軽に作れる。トシシ一五〇グラム、ホワイトリカー一〇〇〇ミリリットル、グラニュー糖一五〇グラム、みりん五〇ミリリットルを用意。トシシをそのまま容器に入れ、二五度のホワイトリカーを加え、冷暗所に保存する。一カ月後に開栓し全液を濾過、生薬の残りを分離。全液を再び容器に戻し、グラニュー糖とみりんを混ぜる。これに生薬の残り約五分の一を再び混ぜ合わせ密封。冷暗所に保存し、一カ月後に開栓し全液を濾過する。熟成に二カ月以上を要するが、わずかに辛味のある酒に仕上がる。好みで砂糖を加えてもよい。特効として老化衰弱・腰痛・下半身無力の補益・強精・強壮が期待される。
トシシ茶はトシシ一〇グラムと紅糖を適量用意。よく洗い檮砕し紅糖を加え熱湯を加えればよい。手軽であり茶の代わりに服用。常用していると補腎・固精・腰膝痛・精液量不足などに薬粥・薬酒と同様の効果が容易に期待されよう。
薬膳としては補陽薬の分類に入る。冬虫夏草・ニクジュヨウ・トシシはよく利用され、すべて腎経に入り強心・強壮・中枢神経の興奮などの働きをする。食法はトシシ餅などに。高齢社会には一段の活躍が期待される。