USEN、有線放送の資産活用 ポータルサイト「カナエル」で飲食店開業を支援

キーパーソン 総合 2020.04.24 12043号 02面
菊地崇夫部長

菊地崇夫部長

大槻卓伺氏

大槻卓伺氏

 主力事業が社会情勢や消費行動の変化にさらされ、持続的成長を続けられるかについての不安は多くの経営層が直面する問題だ。こうした「危機の芽」に気付きいち早く対応したのが、店舗向け音楽配信サービスを展開する「USEN」(USEN-NEXT GROUP)だ。「有線放送」を全国に拡大する中で蓄積した「資産」を活用し、店舗開業意向者向けに、情報を無料で提供する開業支援ポータルサイト「canaeru(カナエル)」を2016年12月に開始。会員数は19年8月に10万人を、20年3月には15万人を突破。カナエルを活用し開業したフレンチ店がミシュランで一つ星を獲得するなど日本の食文化向上に貢献する。また、新型コロナウイルス感染拡大で飲食店が苦境に立たされると、日本政策金融公庫の対策資金融資の申し込み無料サポートを即座に展開した。事業を統括する菊地崇夫事業開発統括部企画制作部長に話を聞いた。

     *

 –新規事業展開の経緯を教えてください。

 菊地 多くの方にご認識いただいている「有線放送」は当社の事業の柱である一方、音楽に対する世間の認識は、有料から無料へと急激に変化している。主力事業の店舗向け音楽配信サービスの成長性を加味し、14年ごろから新ビジネスモデル構築の検討を開始した。当社の営業は日々の営業活動で、新店の開店の情報を工事段階から把握していた。この「情報資産」をさらに活用し、より早い段階で接点をもつことで、ビジネスチャンスが生まれることがわかった。こうした背景から生まれたのが開業サポートサービス「カナエル」だ。

 –サービスの認知拡大のための戦略は。

 菊地 飲食店開業意向者にどのようにアプローチするかを考えた。初期段階では、間口拡大のため「開業をライトに考える層」を囲い込む戦略を推進した。カナエルに飲食店開業に関する記事を多く掲載し無料記事とメールアドレスを登録すると閲覧できる記事を分けサイトアクセスの抵抗感を抑え会員登録数の最大化を図った。これによって約10万会員を突破、3月末で15万人を突破した。

 –カナエルで提供するサービスを教えてください。

 菊地 店舗の開業準備から運営までの各段階で、USENおよびグループ会社が展開するサービスで支援する。開業資金の相談、店舗専用保険の案内、電気やガス、通信回線などのインフラ手配、音楽配信はもちろんレジなど運営に必要なソリューションがそれに当たる。開業意向者には、セミナー、開業相談を無料で実施。特に、開業までの3大要素である、資金、物件、行政手続きなどに関しては、金融機関出身者、不動産業界経験者、店舗オーナー経験者など専門家を揃えマンツーマンで対応している。(青柳英明)

 〈利用者の声〉

 カナエルを利用しフランス料理店「Takumi」を17年2月に開業。19、20年「ミシュランガイド」で「一つ星」を獲得した同店オーナーシェフの大槻卓伺氏は、これから開業を考えている人に対し、「開業に必要なものは、明確なビジョンと覚悟」とした上で「最悪の事態を常に想定し、それでも事業を継続できると断言できる資金力、適応力、覚悟のある人だけが開業するのが望ましい」と語る。自分自身の努力でミシュランの星を獲得することに成功したが、「店を開業できなければ星を獲得することはなかったので、カナエルは開業をスムーズに行う上で、有効に活用させていただいた」と語る。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

関連ワード: 日本政策金融公庫

書籍紹介