製パン業界、小麦・油脂価格上昇で厳しい局面 今夏改定見送りか

小麦加工 ニュース 2021.06.16 12244号 01面
厳しい局面が続く製パン業界

厳しい局面が続く製パン業界

 製パン業界は、21年4月期の輸入小麦政府売渡価格が5.5%増と近年では高い水準で引き上げられたことに加え、油脂価格なども上昇を続けるなど厳しい局面にあるが、「値上げ」は選択しないとの観測が広がる。これまでの春の麦価改定を主な要因とする製パンメーカーの価格改定では、5月下旬から6月初旬の発表で、実施は7月1日出荷分というケースが多かったが、現状で大手製パンメーカーからの発表はない。通常、小売業など得意先への価格改定の説明は2ヵ月前になることから、8月の価格改定の可能性も低そうだ。=関連記事8~9面(青柳英明)

 ●消費者理解などメーカー腐心

 製粉メーカーは今春、業務用小麦粉の価格改定を行った。小麦の流通は政府が国家貿易で外国産小麦を輸入し、製粉メーカーが購入する。その小麦を製粉メーカーが製粉して小麦粉にし、その小麦粉を原料に二次加工メーカーなどへ販売する。今春の政府売渡価格は5.5%引き上げと、近年の価格変動の中でも高値となっていることから、製パンメーカーへの負担は大きい。一方、輸入小麦政府売渡価格推移を見ると20年10月期4.3%引き下げ、同4月期3.1%引き上げ、19年10月期8.7%引き下げ、同4月期1.7%引き下げと比較的低い水準で推移している。

 ある製パンメーカー担当者は本紙取材に対して「今回の小麦粉価格および食用油脂の値上げはパンメーカーにとって非常に厳しいものがある。消費者、流通の理解が必要であるため、価格改定の実施については慎重に検討する」と回答。

 別のメーカー担当者は「消費者に負担をかけないように、内部努力を行う」と説明する。夏の価格改定の可能性は低いようだが、秋の政府売渡価格の行方によっては価格改定に踏み切る可能性はある。

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