技あり味なカンパニー:エア・ウォーター 畑から食卓まで、バリューチェーン構築

農産加工 ニュース 2019.09.23 11945号 02面
鹿嶋健夫上席執行役員

鹿嶋健夫上席執行役員

国内生産シェアトップの生ハム

国内生産シェアトップの生ハム

年間通じて収穫可能なエクアドル産ブロッコリー

年間通じて収穫可能なエクアドル産ブロッコリー

【関西】エア・ウォーターは産業ガス製造を礎に医療、エネルギー、物流など八つの事業領域で21年度に売上げ1兆円を目指す複合企業体だ。その同社が成長領域に据えるのが農業・食品関連事業。「畑から食卓まで」のバリューチェーンを持つ同事業では中食産業への本格参入を表明し、18年度の売上収益1364億円、営業利益42億円を、3年後に売上収益1700億円、営業利益60億円へ拡大させる(19年度からIFRSを任意適用)。6月に同事業トップに就いた鹿嶋健夫上席執行役員農業・食品カンパニー長に「野菜カンパニーを目指す」とする真意や方向性を聞いた。

祖業である産業ガスの液体窒素の冷凍能力を有効活用し、北海道の抜群においしい農産物を大消費地に届けたいと41年前に始めた冷食事業がそもそものスタートだ。その後、ハム・ソーセージ、農業、飲料の各事業へ参入し2014年に農業・食品カンパニーを発足し、野菜加工やスイーツへと領域を広げた。現在は農産物の栽培・調達から食品の製造・加工・販売の“畑から食卓まで”のバリューチェーンを24社で展開している。

生ハム(2800t)や塩(48万t)などが年間販売量で国内トップシェアだが、19年度からは「農産・加工」セグメントを軸に、野菜加工を基軸に事業価値を高めていく。中食分野への参入も本格化し、エア・ウォーター品質の野菜加工品を量販店や専門店のバックヤードへ販売する野菜カンパニーを目指す。品質の高い農産物の調達・加工を得意とし、すでに市場シェアで北海道産冷凍カボチャ45%、北海道産業務用大根おろし70%を誇るが、現在は産地を日本全国、海外へ広げ、今の3倍となる3万haの農地と連携してさらなる安定調達を図る。今春もエクアドルで年間を通じて収穫可能なブロッコリーを高地栽培する凍菜メーカーのエコフロス社をグループ化し、エクアドル産冷凍ブロッコリーの国内シェアが33%になった。農場に隣接する工場で冷凍加工し、畑から最高の状態で日本含む世界各地へ輸出するブロッコリーは、畑で取れたてを生食すると糖度も感じられ、さらにおいしい。安定調達とともにこの品質と感動も食卓へ届けていきたい。

おいしさには理由がある。職人技術に頼る部分も大きい食品業界だが、おいしさを引き出すには科学的思考が不可欠だ。各業界で個性、存在感を放ってきたグループ各社の食品加工製造部門の技術・ノウハウを共有することで、原材料から生産までの過程を集約してデータ化し、食品製造方法を仕組み化し、おいしさでも差別化を図っていく。

当社は2000年度以降、約100社のM&Aを行った。当事業もグループ化で「畑から食卓まで」のサプライチェーンを構築したが、今後3年の設備投資も240億円を予定する。進行中の大山ハム新工場、ゴールドパックのライン新設・増設に加え、原料調達・加工・物流機能を強化し、競争力をさらに高める。野菜を武器とする中食市場での事業拡大には、外食・中食向け野菜の卸・カット野菜製造販売会社のデリカフーズホールディングスとの業務提携も5月に始めた。人々の生活に欠かせず、生活を豊かにする“食”で川上から川下までの安定調達・供給ラインを築き、食品産業を下支えしていきたい。(深瀬雅代)

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