緊急事態宣言、7府県に追加発令 食品業界、危機感も冷静さ保つ

総合 ニュース 2021.01.15 12171号 01面

 菅義偉首相は13日、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象地域に大阪、京都、兵庫、栃木、愛知、岐阜、福岡の7府県を加えた。先の4都県同様に飲食店への営業時間短縮を軸に不要不急の外出自粛を促すものだが、休校措置がなく、パニック化した前回の購買行動は回避できるとの見方が強い。関西で対象となった大阪、京都、兵庫の食品業界は「行政・自治体の指示に従う」と比較的冷静に受け止めている。(深瀬雅代)

 ●関西=さらに飲食店我慢続く

 関西の小売業業界では昨春に消費者がストック買いしたカテゴリー食材の在庫を多少積み増す動きもあるが、通常業務は衛生面を強化する程度で、経験からの学びによって「混乱はない」と予想。総合卸、メーカー各社も前回対応を元に「消費者が新生活様式にある程度慣れた。影響は前回より軽微」「粛々と今できることに対応する」と落ち着いた反応を示した。

 一方、主たる感染要因と定められた外食産業への要請が今回色濃くなったが、関西ではすでに大阪府が「再発令を避ける」目的で20年11月27日から市内一部エリアの飲食店へ午後9時までの営業時間短縮の協力を求め、12月14日からは市内全域へ広げていた。

 京都府も市内で12月21日から21年1月11日まで、兵庫県は阪神間の主要4市で12日からそれぞれ時短要請を進めていたため、心構えとともに外食各社の多くが時短に従う姿勢を見せている。ただ、現状から1時間の閉店前倒しを2月7日まで継続するだけで「飛躍的な成果が出るのか」と疑問の声も上がる。

 業務用食品卸も「外食機会減少で当然、納入食材は減る。だがトラック積載量が減っても、25日間のために減便やシフトチェンジは難しい」と日常業務での極端な対応は避ける見通し。「経済のスピードはスローダウンするが、自社でコントロールできることに取り組むのみ」と自粛環境へ順応する。

 一方で注目が集まったのが、年明けから関西で毎週予定された食品業界のリアル展示商談会の行方だ。20年は春以降にほぼ延期・中止となった各提案会も、21年からは市場回復の起爆剤として卸各社が前向きに計画していた。だが再発令をきっかけに3月までの開催予定は大半が見送られた。=関連記事2面

 ●中部=チラシなど継続の方向

 中部地区は、愛知、岐阜の2県が対象となった。両県で展開する食品スーパー各社の13日の時点では、営業時間や折り込みチラシなど「これまで通りを基本に、今後の対応を検討」し、商品確保を厚くしている状況だが、業務用業界からは、回復基調にあった外食店の落ち込みや、テレワーク推奨に伴い、産業給食の食数減などを懸念する声が上がった。

 食品スーパーは「袋麺や冷凍食品などを中心に通常よりも倍以上の商品を確保」して備える一方、今回は消費者の冷静な購買を予想し「前回ほどの集中はないのではないか」と見ており、第1波の春ごろに自粛した折り込みチラシは、13日時点では通常通りが多数で、まずは現場の状況を見極めた上で判断する。

 ショッピングセンターも展開するユニーは、すでに緊急事態宣言が出されている関東の店舗は、営業時間は通常通りで、飲食店の午後8時までの営業時間短縮については、テナントの各専門店の判断とするなど、東海地区も関東に準ずる方向だ。

 岐阜が本社のバローは、食品スーパーは中部地区を中心に13県に展開しており、緊急事態宣言対象県の岐阜、愛知、京都、大阪を中心に対応を今後検討していく。1月9~11日の3連休は、緊急事態宣言前だったが大型店を中心に「備蓄商品中心に非常によく売れた」とのこと。

 静岡県浜松市が本社のマックスバリュ東海は、神奈川、山梨、静岡、愛知、岐阜、三重、滋賀の7県に展開しており、今回の緊急事態宣言を受け、24時間営業店のイートインコーナーを、朝7時から夜8時までに短縮する。

 食品スーパーの今年度は、巣ごもり需要増で多くの企業で売上げが約5%以上アップしていた。ただ、昨秋ごろから売上げは落ち着き、11月度には前年100%を割る企業も出始めたところだったが、20年12月前後からの第3波と呼ばれる感染再拡大で再び内食需要が増加し、12月度は各社売上げが再び増加に転じた。

 業務用業界は、昨秋からGoToイートなどで回復基調だったが、外食店舗では今後の厳しい見通しを予想し、弁当や惣菜、テークアウトへの注力をさらに強める考えだ。(海野裕之、立川大介)

 ●福岡=巣ごもり消費増加 大寒波襲来も助長

 福岡県でも緊急事態宣言が13日発令された。昨年から福岡地区も陽性患者の数は恒常的に増え続け、特に福岡市内に限定すれば人口比からすると抜き差しならない状況が続く。九州第2の都市、熊本も同様で、九州他県においても人口換算すると意外に高い数値を示している。

 九州流通業界も昨年の緊急事態宣言による極端な消費動向に対応し、身構える姿勢を崩していないのが現状だ。ただ今回は休校が含まれないため子ども向け需要の変化はないと推測されるが、昨年から連日TVで放映されるコロナ情報は関東から千km離れた九州でも、危機感は隠せない。

 特に東京での2000人超の報道は、年初になって消費変化を引き起こした。即席麺や冷凍食品の家庭内在庫が増え、生活防衛が如実に表れているが、この1週間を見ると、1月7~9日にかけての大寒波は特に買いだめを助長した。

 8日から9日にかけては福岡市内でも降雪が積雪となり、山間部はもちろん、福岡都市高速をはじめとして、九州各地の九州高速道も一時通行止めとなったため、小売店舗の食品棚は保存食品を中心に欠品状態となった。

 食品卸も寒波当日は大幅に納入遅延となり、物流網に支障が生じた。だが積雪は九州では長続きはしない。長くて2日間で、配送網は即、解決した。

 九州流通業界では徐々に本格化するコロナによる生活防衛と大寒波の備えが生活者の買い物行動に拍車をかけた状況となった。流通関係者は「確かに直近において徐々に生活必需品の買いだめが進んでいるように思えるが、昨年の宣言後に比べると平穏。だがコロナのない平時からすると確実に巣ごもり消費が続いていると実感している」という。(堀江勝)

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